大腸内視鏡検査で発見される大腸ポリープ。見つかったあとも定期的に内視鏡検査を受けていく必要があるとされています。
ところが、そんな常識も疑ったほうがいいかもしれません。
有名な米国のPLCO研究から、ひとつの報告がありましたので、ご紹介します。
コホート研究(Click, 2018年)*1
研究の概要
大腸内視鏡検査を実施した人のうち、進行大腸腺腫(1cm以上または高度異型性・管状絨毛腺腫・絨毛腺腫)のある人は、非進行大腸腺腫(1cm未満で病理上進行性所見のないもの)のある人に比べて、大腸直腸がん発症が多いか *2 を検討した予後に関するコホート研究。
主な結果
対象はPLCO研究(後述)に参加した人のうち、大腸内視鏡検査を実施した55-75歳の成人15,935人。
最初の大腸内視鏡検査では、
追跡期間中央値は12.9年。
- 2,882人(18.1%)が進行大腸腺腫
- 5,068人(31.8%)が非進行大腸腺腫
- 7,985人(50.1%) が腺腫なし。
大腸直腸がん発症(1万人年あたり)は、
- 進行腺腫群 20.0 (95%CI, 15.3-24.7; n = 70)
- 非進行腺腫群 9.1 (95%CI, 6.7-11.5; n = 55)
- 腺腫なし群 7.5 (95%CI, 5.8-9.7; n = 71)
大腸直腸がん発症は腺腫なし群に比べて、進行腺腫群では2.7倍 *3 多かったが、非進行腺腫群では同等 *4であった。
大腸がん死亡も同等
進行腺腫でない限り、大腸腺腫があっても腺腫なしと比べて大腸直腸がん発症リスクは同じ、ということになります。
さらに、2次アウトカムで大腸直腸がん死亡も検討されております。
やはり進行腺腫群では2.6倍多い *5ですが、非進行腺腫群では同等 *6 となっています。
この結果からは、進行腺腫でない限り、追跡検査にあまりこだわりすぎなくてもよいと言えるでしょう。
PLCOとは
PLCO研究とは、前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんの診断方法の有効性を検証した15万人規模の米国のランダム化比較試験です。
CMECジャーナルクラブでもいくつか論文が取り上げられています。
前立腺がん検診は受けたほうがよいのでしょうか? ①
胸部X線による肺がん検診を受けると、肺がんによる死亡は防げますか?
S状結腸内視鏡による検診を受けると、大腸がんは予防できますか?
がん検診を受けると、卵巣がんは予防できますか?
検診の効果を検証することは、とても大切なことだと思います。けんしん大国日本からのエビデンスにも期待したいですが・・・。
*1:Click B, Pinsky PF, Hickey T, Doroudi M, Schoen RE. Association of Colonoscopy Adenoma Findings With Long-term Colorectal Cancer Incidence. JAMA. 2018 May 15;319(19):2021-2031. doi: 10.1001/jama.2018.5809. PubMed PMID: 29800214.
*2:1次アウトカムは最初の検査から15年以内の大腸直腸がん発症。2次アウトカムは大腸直腸がん死亡。
*3:rate ratio [RR], 2.7 [95%信頼区間 1.9, 3.7]
*4:RR, 1.2 [95%信頼区間 0.8, 1.7]
*5:RR, 2.6 [95%信頼区間 1.2, 5.7]
*6:RR, 1.2 [95%信頼区間 0.5, 2.7]