地域医療日誌

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骨粗鬆症の治療は半年に1回の注射でいいですか?

質問

 骨粗鬆症の治療で半年に1回注射をしてもらっていますが、どの程度効果がありますか?(高齢女性)

 

 骨粗鬆症の治療というよりも、次の骨折の予防と言ったほうが正確かもしれません。高齢者については骨が弱くなっていくのはやむを得ないことでもありますので、どんな骨折をどのくらい少なくできるのか、が焦点となります。

 

前立腺がん患者の研究 

 デノスマブ(商品名プラリア皮下注)は破骨細胞の形成・機能・生存に重要な役割を果たす蛋白質、RANKリガンドを標的とするヒト型モノクローナル抗体です。

 6か月に1回の皮下注射でよいため、骨粗鬆症の治療(骨折予防)として使われるようになっています。

 

 その効果はどうでしょうか。調べてみました。

ランダム化比較試験(Smith, 2009年) *1

研究の概要

 前立腺がんと診断され、アンドロゲン抑制療法を行っている男性がデノスマブ60mg皮下注射を6か月ごとに受けると、プラセボに比べて24か月後の腰椎骨密度低下はおさえされるか、を検討した二重盲検ランダム化比較試験。

 

主な結果

  各群734人が対象。24か月の時点での骨密度変化量はデノスマブ群では5.6%増加に対してプラセボ群では1.0%減少とデノスマブ群で有意に改善がみられた。

 また1次アウトカムではないが、36か月の時点での新たな椎体骨折はデノスマブ群1.5%、プラセボ群3.9%、相対危険0.38(95%信頼区間0.19, 0.78)とデノスマブ群で62%少ない。

 

椎体骨折が62%少ない

 骨密度で効果を判定する、という目的で実施されたランダム化比較試験です。いわゆる「代用のアウトカム」研究です。

 確かに24か月後の骨密度は改善がみられていたのですが、さらに、36か月後の時点で検討すると椎体骨折は62%少なくなっていた、ということです。(24か月後の時点でも椎体骨折は同様の傾向となっています。)

 有害事象もとくに多くなっていません。なかなかいい結果のように思えます。

 

 しかし、これは前立腺がんで治療中の男性を対象とした研究です。

 基礎疾患のない人や女性でも同様の効果があるのでしょうか。

 

日本人女性の研究では?

 骨粗鬆症の日本人に対して、デノスマブ60mg皮下注射の効果を検討したランダム化比較試験(DIRECT試験)がありますので、論文を確認しておきましょう。

ランダム化比較試験(Nakamura, 2014年) *2

研究の概要

 骨粗鬆症の日本人(閉経後の女性または男性)が、デノスマブ60mg皮下注射を6ヶ月に1回受けると、プラセボ注射(またはアレンドロネート35mgの週1回服用=オープン試験)に比べて、24か月後の新たな椎体骨折は少ないかを検討した、二重盲検ランダム化比較試験。

 対象者全員が600mgのカルシウムと400IUのビタミンDを服用。

 

主な結果

 1,262人のうち、デノスマブ群500人(解析472人、平均69.9歳、女性95%)、プラセボ群511人(解析480人、平均69.0歳、女性95%)、アレンドロネート群251人に割付。

 24か月投与後の新たな椎体骨折はデノスマブ群では3.6%、プラセボ群では10.3%。ハザード比 0.343(95%信頼区間 0.194, 0.606)とデノスマブ群で66%少ない。

 有害事象については有意差がなかった。

 

2年で66%椎体骨折が少ない

 対象者はほとんどが高齢女性となっていました。前立腺がん患者と同様、椎体骨折が約6割少ないという結果となっております。

 すでに椎体骨折の既往がある人については、選択肢のひとつとなりうるかもしれません。

 

注射のほうがいい?

 デノスマブについて、また新しいメタ分析が発表されていました。ホットな話題ですね。論文をみておきましょう。

メタ分析(Beaudoin, 2016年) *3

研究の概要

 骨粗鬆症のある成人がデノスマブの注射を受けると、ほかの治療に比べて骨折(椎体、大腿骨頸部、その他の部位)、有害事象(すべて、有害事象による脱落、死亡)は少ないか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 閉経後女性を対象とした9研究(4890人)の結果を統合。デノスマブは多くの研究で6か月毎の注射。追跡期間は12-24か月。多くの研究では対照群はビスフォスフォネートであった。

 骨折はデノスマブ群で 99/2445人、対照群で 71/2157人、リスク比 1.15(95%信頼区間 0.84, 1.58)とデノスマブ群でやや多い傾向であった。

 有害事象はデノスマブ群で 1845/2528人、対照群で 1595/2238人、リスク比 0.99(95%信頼区間 0.96, 1.02)とほぼ同等であった。

 

骨折はむしろ15%多い傾向

 ビスフォスフォネートなどの他の内服治療と比べて、デノスマブ注射の骨折予防効果はやや劣る、という結果でした。

 それでも、半年に1回だけ注射すればよいだけ、という手軽さにはメリットがあるでしょうから、選択肢のひとつにはなるでしょうか。

 

 以前紹介した日本人女性の研究はプラセボとの比較であったため、このメタ分析には含まれていませんでした。

 デノスマブの効果や多剤との比較については、今後も注視していきたいと思います。

記事再編 2020-8-10

*1:Smith MR, Egerdie B, Hernández Toriz N, Feldman R, Tammela TL, Saad F, Heracek J, Szwedowski M, Ke C, Kupic A, Leder BZ, Goessl C; Denosumab HALT Prostate Cancer Study Group. Denosumab in men receiving androgen-deprivation therapy for prostate cancer. N Engl J Med. 2009 Aug 20;361(8):745-55. doi: 10.1056/NEJMoa0809003. Epub 2009 Aug 11. PubMed PMID: 19671656; PubMed Central PMCID: PMC3038121.

*2:Nakamura T, Matsumoto T, Sugimoto T, Hosoi T, Miki T, Gorai I, Yoshikawa H, Tanaka Y, Tanaka S, Sone T, Nakano T, Ito M, Matsui S, Yoneda T, Takami H, Watanabe K, Osakabe T, Shiraki M, Fukunaga M. Clinical Trials Express: fracture risk reduction with denosumab in Japanese postmenopausal women and men with osteoporosis: denosumab fracture intervention randomized placebo controlled trial (DIRECT). J Clin Endocrinol Metab. 2014 Jul;99(7):2599-607. doi: 10.1210/jc.2013-4175. Epub 2014 Mar 19. PubMed PMID: 24646104; PubMed Central PMCID: PMC4191553.

*3:Beaudoin C, Jean S, Bessette L, Ste-Marie LG, Moore L, Brown JP. Denosumab compared to other treatments to prevent or treat osteoporosis in individuals at risk of fracture: a systematic review and meta-analysis. Osteoporos Int. 2016 Sep;27(9):2835-44. doi: 10.1007/s00198-016-3607-6. Epub 2016 Apr 27. PubMed PMID: 27120345.

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