発表されなかった臨床研究
臨床研究が立案され、実施されている途上で、何らかの理由で中止されてしまうものがあります。それはどの程度あり、どんな理由なのでしょうか?
検討した論文が発表されています。
後向きコホート研究(Kasenda B, 2014年)*1
2000年から2003年にスイス、ドイツ、カナダの6つの研究倫理委員会で承認されたランダム化比較試験の研究プロトコールについて、2013年4月24日の時点で実施状況を調査。
1017件のうち253件(24.9%, 95%信頼区間 22.3%-27.6%)が中止となっていた。そのうち、倫理委員会に報告があったのは96件(37.9%, 95%信頼区間 32.0%-44.3%)のみ。
中止の最多理由は参加者が集まらないため(9.9%, 95%信頼区間 8.2%-12.0%)。企業が資金提供した研究では研究者資金の研究に比べて中止が75%少なかった(8.4%vs 26.5%; オッズ比 0.25, 95%信頼区間 0.15-0.43)。また中止された研究は未発表のままになっていることが3倍以上多かった(55.1%vs 33.6%; オッズ比 3.19, 95%信頼区間 2.29-4.43)。
4分の1が中止
この報告では、中央値11.6年の追跡期間で、約25%のランダム化比較試験が中止となっていたことがわかります。
中止の定義は以下のように記載されています。
We considered an RCT discontinued if the investigators indicated discontinuation with a reason in the correspondence with the REC, in a journal publication, or in their response to our survey(see below). If we could not elucidate the reason for trial discontinuation or if poor participant recruitment was mentioned, we used a prespecified cut off of less than 90% of achieved target sample size (and in a sensitivity analysis of less than 80%) to determine discontinuation.
中止の理由(頻度順)では、
- Poor recruitment
- Futility
- Administrative reasons
- Harm
- Unknown reason
- Benefit
- External evidence
- Lack of funding
- Other
害や有効性が明らかとなった場合も、中止には含まれています。
企業からの資金提供が成功の鍵
参加者のリクルートは臨床研究を行う上で大きな障壁となっていることが、あらためて浮き彫りとなっています。
そもそも、協力していただける参加者がいなければ、臨床研究は成り立ちません。ランダム化比較試験への研究協力者のリクルートには、製薬企業の資金協力が大きく貢献している、という側面はありそうです。
結果的に、製薬企業主導の臨床研究は成功して成果が得られやすくなっている、という現実があります。
研究を進めたい研究者と製薬企業。研究とカネの問題は、今後も話題が尽きそうにありません。
*1:Kasenda B, von Elm E, You J, et al. Prevalence, characteristics, and publication of discontinued randomized trials. JAMA. 2014 Mar 12;311(10):1045-51. doi: 10.1001/jama.2014.1361. PubMed PMID: 24618966.