地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

副甲状腺ホルモンは週1でもいいですか?

 副甲状腺ホルモンで骨折が少ない - 地域医療日誌 のつづき記事です。

 

 副甲状腺ホルモン製剤の効果について、さらに見ていきましょう。

 副甲状腺ホルモン製剤を毎日注射ではなく週1回の注射では、効果はどうでしょうか。日本人を対象としたランダム化比較試験があります。 

ランダム化比較試験(Nakamura, 2012年) *1

研究の概要

 椎骨骨折の既往がある骨粗鬆症の日本人578人(65-95歳)が副甲状腺ホルモン製剤のテリパラチド56.5μg 週1回注射を72週間受けると、プラセボに比べて新規の椎骨骨折の発症は少なくなるか、を検討した二重盲検ランダム化比較試験。

 

主な結果

 72週間までの新規の椎骨骨折の累積発症率はテリパラチド群では 3.1%(7人)に対して、プラセボ群では14.5%(35人)。相対危険は 0.20(95%信頼区間 0.09, 0.45)と テリパラチド群で椎骨骨折は少ない。

 

 この研究は各群286人でランダム割り付けされていますが、研究終了時にはテリパラチド群では200人、プラセボ群では242人とかなりの脱落がみられています。それが結果に与えた影響は未知数ですが、気になる点ではあります。

 

 その後、同じ研究の追跡調査が発表されています。 

ランダム化比較試験(Sugimoto, 2013年) *2

研究の概要

 TOWER試験72週間のプロトコール終了後の追跡調査。椎骨骨折の既往がある骨粗鬆症の日本人578人(65-95歳)がテリパラチド56.5μg週1回注射を72週間受けると、プラセボに比べて研究終了後1年間の新規の椎骨骨折の発症は少なくなるか、を検討した二重盲検ランダム化比較試験。

 

主な結果

 研究終了後1年間の追跡期間中の椎骨骨折は、テリパラチド群で 7人/203人、プラセボ群で 33人/241人。相対危険は 0.23(95%信頼区間 0.10, 0.52)とテリパラチド群で椎骨骨折は少ない。

 また、TOWER試験期間を含む全期間においても同様に、テリパラチド群 10人/203人、プラセボ群 55人/241人、相対危険 0.18(95%信頼区間 0.09, 0.36)とテリパラチド群で椎骨骨折が少ない。

 

 さらに追跡期間を1年間延期した場合でも同様に、椎骨骨折はテリパラチド群で少ない、という結果になります。

 週1回の注射でも効果は期待できそうです。

 

 テリパラチドは国内では、

  • 毎日注射:フォルテオ皮下注キット600μg(24か月まで)
  • 週1回注射:テリボン皮下注用56.5μg(72週間まで)

となっております。

 投与期間に制限があるのは、ラットの研究で骨肉腫が発生した報告があるためです。

 

 つづく

*1:Nakamura T, Sugimoto T, Nakano T, Kishimoto H, Ito M, Fukunaga M, Hagino H, Sone T, Yoshikawa H, Nishizawa Y, Fujita T, Shiraki M. Randomized Teriparatide [human parathyroid hormone (PTH) 1-34] Once-Weekly Efficacy Research (TOWER) trial for examining the reduction in new vertebral fractures in subjects with primary osteoporosis and high fracture risk. J Clin Endocrinol Metab. 2012 Sep;97(9):3097-106. doi: 10.1210/jc.2011-3479. Epub 2012 Jun 20. PubMed PMID: 22723322.

*2:Sugimoto T, Shiraki M, Nakano T, Kishimoto H, Ito M, Fukunaga M, Hagino H, Sone T, Kuroda T, Nakamura T. Vertebral fracture risk after once-weekly teriparatide injections: follow-up study of Teriparatide Once-Weekly Efficacy Research (TOWER) trial. Curr Med Res Opin. 2013 Mar;29(3):195-203. doi: 10.1185/03007995.2012.761956. Epub 2013 Jan 17. PubMed PMID: 23259702.

 Copyright © 2003, 2007-2021 地域医療ジャーナル