地域医療日誌

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入院より在宅のほうがいいですか?

 

 自宅で最期を迎えるには - 地域医療日誌 のリライト記事です。

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入院と在宅の比較

 がんなどの終末期では、在宅医療と病院での入院治療はどちらがいいのでしょうか?

 もちろん、それぞれには長所短所があり、個別に判断すべきことだとは思いますが、両者を比較した研究も発表されています。

 あらためて検索してみたところ、2016年のメタ分析(このブログ記事で以前紹介したことがある論文)が、代表的な論文のようです。

 ここでもう一度、おさらいしておこうと思います。

メタ分析(Shepperd, 2016年) *1

研究の概要

 終末期医療が必要な18歳以上の患者が、自宅で終末期ケアを受けると、病院やホスピスでのケアに比べて、自宅で最期を迎えられるかまたは予定外の入退院が少なくなるか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 採用基準に該当した研究は4研究(3つのランダム化比較試験と1つのクラスターランダム化比較試験)。

 自宅で最期を迎えられた人(3研究、652人が対象)はリスク比 1.33(95%信頼区間 1.14, 1.55)と在宅ケア群で多かった。

 予定外の入院(4研究、823人が対象)についてはリスク比 0.93(95%信頼区間 0.82, 1.05)と在宅ケア群でやや少ない傾向がみられた。

 

在宅ケアを受けると自宅で最後を迎えやすい

 主要評価項目(1次アウトカム)の結果については、上記の通り。在宅ケア群のほうが自宅で最期を迎えられやすく、予定外の入院は少ない傾向となっていました。

 この1次アウトカムの設定や研究仮説、ちょっと理解しがたいです。

Main outcomes
1. Place of death
2. Unplanned/precipitous admission to or discharge from hospital 

 

 2. の「在宅ケアを受けたほうが、緊急入院が少なくなるか」というのはまだわかりますが、1. の「在宅ケアを受けたほうが、自宅で最期を迎えられるか」って、当然のような気がしますよね。

 

真のアウトカム検討も・・・

 ただ、2次アウトカムには参考になる評価項目が入っています。

Other outcomes
1. Control of symptoms (pain, breathlessness, nausea and vomiting, constipation, terminal agitation)
2. Delay in care (medical, nursing, or domiciliary care) from point of referral to intervention (end-of-life home care/hospice at home or inpatient care)
3. Participant health outcomes, including patient-reported outcomes such as functional status and patient satisfaction
4. Family- or caregiver-reported symptoms, including stress and anxiety

5. Family or caregiver unable to continue caring
6. Participant’s preferred place of death
7. Health service use, including system and caregiver costs 

 

 死亡や患者満足度などの「真のアウトカム」も2次アウトカムで検討されています。これらの項目のほとんどは該当研究が少なく、メタ分析には至っていませんでした。

 結果の概要は以下の通り。

6か月時点のスコア(Hughes 1992):死亡による脱落が多い

  • 機能状態(The Barthel Self-Care Index with modified scoring system):在宅ケア群 72点、対照群 69.31点(検定・推定なされず)
  • 心理的健康状態(Philadelphia Geriatric Morale Scale):在宅ケア群 1.54、対照群 1.57(検定・推定なされず)
  • 認知機能(Short Portable Mental Status Questionnaire):在宅ケア群 8.33、対照群 8.86(検定・推定なされず)

患者満足度

  • 30日では在宅ケア群の患者満足度 *2 が高かった(オッズ比 3.37, 95%信頼区間 1.42, 8.10)が、60日ではほぼ同等(オッズ比 1.79, 95%信頼区間 0.65, 4.96)(Brumley 2007)
  • 1か月時点では在宅ケア群で患者満足度 *3 が高かった(p=0.02)が、6か月時点ではほぼ同等(Hughes 1992)

死亡

  • 6か月時点では在宅ケア群 79.1%、対照群 77.6%、群間差 1.4(95%信頼区間 -10.9, 13.7)と同等(Hughes 1992)

生存期間

  • 在宅ケア群 中央値 11日(このうち入院例 中央値 16日、非入院例 中央値 8日:p=0.003)、対照群 中央値 11日(Grande 2000)
  • 在宅ケア群 中央値 99日(95% CI 79, 119)、対照群 中央値 127日(95% CI 88, 166)(Jordhøy 2000)
  • 在宅ケア群 平均 196日、対照群 平均 242日(p=0.03)(Brumley 2007)

 

短期では在宅ケアの患者満足度は高く、死亡も同等

 1か月程度では自宅で終末期ケアを受けるほうが患者満足度が高いようですが、長くなると患者満足度が低下してくる傾向がみられます。在宅ケアは長期になるとつらくなる、ということなのかもしれません。

 死亡については、6か月時点では同等という研究がひとつありました。

 生存期間については、長期になれば対照群のほうが生存期間が長くなる傾向がみられました。しかし、生存期間中央値 100-200日という長期予後の患者集団が終末期患者を代表しているのか、という疑問は感じます。

 短期予後の集団では、生存期間も同等となっています。

 

研究のばらつきも大きく検討はまだ十分ではない

 さて、在宅ケア群ではどのようなケアを受けていたのでしょうか。本文から一部引用しておきます。 

The intervention in three trials was multidisciplinary care, which included specialist palliative-care nurses, family physicians, palliative-care consultants, physiotherapists, occupational therapists, nutritionists, and social care workers (Brumley 2007; Hughes 1992;Jordhøy2000). In one trial the focus of the intervention was on nursing care, which was only available for the last two weeks of life (Grande 2000). In three trials, nursing care was available for 24 hours if required; in the trial conducted in Norway the smallest urban district did not have access to 24-hour care. The intervention evaluated by Jordhøy 2000 was hospital-based at the Palliative Medicine Unit, which provided community outreach.

 

 自宅での終末期ケアといっても、研究によってまちまち。結果も異質性の高いものになることは避けられないでしょう。

 大切なことは、両者にあまり大きな差がありませんから、どちらを選んでもよいということです。個別の事情をよく勘案して決断されることをおすすめします。

*1:Shepperd S, Gonçalves-Bradley DC, Straus SE, Wee B. Hospital at home: home-based end-of-life care. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Feb 18;2:CD009231. doi: 10.1002/14651858.CD009231.pub2. Review. PubMed PMID: 26887902.

*2:the Reid-Gundlack Satisfaction with Service instrument

*3:17 item questionnaire derived from the National Hospice Study

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