地域医療日誌

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終末期の栄養について

 

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常識の罠

 終末期の方は、口から食べられなくなってくることがしばしば。栄養がとれなくなるのだから何らかの方法で栄養を補給してあげたほうがよい、と考えるかもしれませんが、栄養補給目的の医療行為を行ったほうがよいのかについてはっきりとした結論が出ていません

 つまり、栄養補給を行ったほうが絶対いいという医学的結論には至っていない、ということです。

 常識的・感情的に考えたことと、科学的な結論が一致しないことはよくあることですから、注意が必要です。

 

 本当にそうなのか、確認しておきましょう。

システマティックレビュー(Good, 2014年) *1

研究の概要

 緩和ケアを受けている患者が医療行為として栄養補給を行うと、プラセボまたは行わないのに比べてQOLは改善するか、を検討したランダム化比較試験のシステマティックレビュー。

 

主な結果

 該当研究なし。 

 

検証されていなかった

 残念ながら、網羅的な検索でも質の高い研究は見つかりませんでした。やはり、医学的検証はされていなかった、ということがわかりました。

 

 基準に満たないために除外された研究として、観察研究がいくつが挙げられていました。後学のために、確認しておきましょう。

観察研究(Chermesh, 2011年) *2

研究の概要

 消化管閉塞がありイスラエルの3次医療機関に入院している患者に在宅中心静脈栄養を行うと、生存期間や合併症はどの程度か、を検討した、予後に関する前向き観察研究。

 

主な結果

  68人が在宅中心静脈栄養を受けた。このうち28人はがん(卵巣がん9人、胃がん8人、その他11人)で、30人は非がん性消化管機能不全。

 がん患者については生存期間中央値は140日(20-783日)で、PS(パフォーマンスステータス)がよい人のほうが長かった。がん患者では治療期間が長くなるほど、合併症全般や感染症が多くなっていた。

 

 こちらは比較対照をおかない観察研究でした。

 どのような経過となったかを検討されているだけで、在宅中心静脈栄養の効果がわかる研究ではありません。

 注目は合併症でしょうか。28人のがん患者のうち、21%(6人)に敗血症がみられています。ほかに骨痛 1人、高カリウム血症 1人がみられ、合併症全体では8人(3153人日)となっています。

 これは、非がん患者の 5人 *3(15461人日)に比べて多くなっています(オッズ比 7.9, 95%信頼区間 2.6, 24)。

 

 がん患者での在宅中心静脈栄養では、合併症が多くなる懸念があるということがわかりました。

 効果と害を見すえながら、今後に生かしていきたいと思います。

 

*1:Good P, Richard R, Syrmis W, Jenkins-Marsh S, Stephens J. Medically assisted nutrition for adult palliative care patients. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Apr 23;(4):CD006274. doi: 10.1002/14651858.CD006274.pub3. Review. PubMed PMID: 24760679.

*2:Chermesh I, Mashiach T, Amit A, Haim N, Papier I, Efergan R, Lachter J, Eliakim R. Home parenteral nutrition (HTPN) for incurable patients with cancer with gastrointestinal obstruction: do the benefits outweigh the risks? Med Oncol. 2011 Mar;28(1):83-8. doi: 10.1007/s12032-010-9426-2. Epub 2010 Jan 27. PubMed PMID: 20107935.

*3:このうち敗血症の1人は亡くなっています。

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