質問
公園で蚊にさされてしまったのですが。
蚊に刺される人は増えている?
蚊が発生する時期になりました。公園など屋外で蚊に刺されて腫れた人が、医療機関を受診されることがあります。
蚊にさされたぐらいで、と思うかもしれませんが、受診するぐらいですから、かなり腫れていたり、心配されている人が多いです。何に刺されたかわからない、という人もいます。
まあ、蚊に刺されて受診する人が目立つようになったのは、 デング熱が流行してからでしょうか。統計は確認していませんが、主観的には多くなった印象です。
デング熱の情報はこちらをどうぞ。
以前、フィリピン滞在中に蚊にさされ、帰国後にデング熱と診断され死亡した事例が報道されていました。
厚生労働省は「デング熱の流行地域から帰国後に発熱などの症状が出た場合は、速やかに医療機関を受診してほしい」と呼びかけています。
今後はこのような報告が増えてくるかもしれません。
抗ヒスタミン薬は?
さてそれで、蚊に刺された人のことですが、たくさん刺されてしまったようでした。腫れてきて心配なので受診されました。これまではこんなに腫れたことはなかった、とのこと。
ステロイド外用薬を処方しようとしたところ、このように言われました。
飲み薬は効かないですか?
抗ヒスタミン薬を処方するという選択肢もあるでしょうが、所見は局所の発疹だけで全身症状はなく、アレルギー素因もほとんどありませんでした。*1
こういった場合、内服薬は効果はないのでしょうか?
調べてみました。
ランダム化比較試験(Karppinen, 2002年) *2
研究の概要
蚊に刺されると腫れやすいボランティアの成人29人に対して、セチリジン10mg・エバスチン10mg・ロラタジン10mgを飲んで蚊に刺されると、プラセボを飲んで蚊に刺されるのに比べて、刺された部位の発疹の大きさとかゆみの程度は少なくなるのか、を検討した二重盲検クロスオーバーランダム化比較試験。
主な結果
2人がプラセボでも反応がみられなかったため除外。 刺されて15分後の発疹の大きさについては、セチリジン群 25mm(95%信頼区間12, 25)、エバスチン群 16mm(95%信頼区間22, 25)、ロラタジン群 25mm(95%信頼区間16, 48)、プラセボ群 28mm (95%信頼区間16, 63)と セチリジン、エバスチン群ではプラセボ群よりも15分後の蚊に刺された反応が小さかった。
かゆみの程度をVASスケール(100点満点)で評価すると、 セチリジン群 0点(95%信頼区間0, 30)、エバスチン群10点(95%信頼区間0, 30)、ロラタジン群30点(95%信頼区間10, 60)、プラセボ群50点(95%信頼区間10, 70)と やはりセチリジン、エバスチン群でかゆみが少なかった。
ボランティアに協力してもらい、あえて蚊に刺されてその反応を比較するという、少々乱暴な研究です。
まあ、こうしないと検証がしにくくなってしまうわけですが。 したがって小規模での検討となっています。
この結果を見る限り、刺された直後の反応については、セチリジン(ジルテックなど)、エバスチン(エバステルなど)に効果がありそうです。
治療としては使いにくい?
ただし、注意が必要です。この研究では、少なくとも3日間内服してから蚊に刺されていますので、蚊に刺されてから内服してもこのような効果は期待できません。
また、ロラタジン(クラリチンなど)で効果が乏しかったのは、薬がまだ定常状態に達していなかったため、という可能性も考えられます。(ロラタジンは他剤に比べて定常状態まで時間がかかります。)したがって、薬の種類によって効果に差があるかについては、判断保留としたいです。
つまり、蚊に刺されてよく腫れる人が、蚊に刺されそうな状況となる前に、前もって飲んでおく、というような予防的な使い方でしか効果が期待できないかもしれません。
治療としてはなかなか難しそうですので、「効果なし」に分類します。
やはり、蚊にはなるべく刺されないようにしたいものです。