医学的ではない理由で対応を求めてくる施設職員
施設高齢者、血圧をしっかり下げると総死亡1.8倍に - 地域医療日誌 のつづきです。
前回紹介した論文を読んだだけでも、施設高齢者などに降圧薬をがっちり使って血圧を下げることが有害か、はっきりわかります。
まあそんなこと、やらないほうがいいですよね。
それなのに、なぜ「血圧が高いから入浴させられない」「降圧薬を増やしてほしい」という問い合わせが頻繁に来るのか、はなはだ疑問です。
何をおそれているのでしょうか?
施設で何かあっては困るという「医学的根拠のない」不安から、薬をのまされ、むしろ寿命を縮めてしまっている可能性を、いつまでも放っておくわけにはいきません。
やはり血圧低い人が総死亡多い
さて、もうひとつ研究をご紹介しておきましょう。
コホート研究(Rådholm, 2016年) *1
研究の概要
スウェーデン南東部の介護施設に居住する人のうちで、収縮期血圧が低い人は、正常から高血圧の人に比べて、30か月間での総死亡は多いかを検討したコホート研究。
主な結果
対象となった高齢者は406人、平均85歳。観察期間内に174人(43%)が死亡。収縮期血圧120-139mmHgの人に比べて、120mmHg未満の人は総死亡のハザード比が1.56(95%信頼区間 1.08, 2.27)と多かった。
心不全の診断、BMI、合併症の数、年齢、性別を調整しても、総死亡のハザード比は1.49(95%信頼区間 1.004, 2.20)と多かった。
140mmHg以上では有意差はなかった。また、降圧薬数にも差がみられなかった。
やはりこちらも同じ結果でした。
収縮期血圧が120mmHg未満と、よく血圧が下がっている人では総死亡が1.56倍多い、という結果です。
施設居住者では、血圧が高い人よりも、低い人に注意すべきであることがよくわかる結果です。
施設での血圧基準、見直しが必要ではないですか?
*1:Rådholm K, Festin K, Falk M, Midlöv P, Mölstad S, Östgren CJ. Blood pressure and all-cause mortality: a prospective study of nursing home residents. Age Ageing. 2016 Nov;45(6):826-832. Epub 2016 Jul 18. PubMed PMID: 27496923.