地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

認知症ピアサポートへ国が支援

 

 世界アルツハイマーデー(9月21日)があったせいか、この時期になると認知症関連の話題がメディアをにぎわします。

 まずは、昨年発表したぼくの認知症関連の記事をふりかえってみたいと思います。

 

認知症高齢者数は推計人数

先行研究では4-11%

www.bycomet.tokyo

 65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症高齢者は約462万人、MCI(軽度認知障害)の高齢者は約400万人となっています。さらに、2025年には認知症高齢者は700万人まで増加するとみられています。

 462万人という数字は、65歳以上の高齢者のちょうど15%が認知症になっている、という計算になります。

 この15%の根拠がひとつの研究に基づくものですが、この研究が過去の疫学調査結果(60歳または65歳以上の認知症有病率 4.1-10.6%)に比べて著しく高くなっているのではないか、という記事でした。

 認知症高齢者数は実数ではなく、あくまでも推計人数なのです。

 さらに、こちらの記事。

米国の調査では2%

www.bycomet.tokyo

 米国の有名なコホート研究 Framingham Heart Study の2016年の報告。

 60歳以上の認知症患者数は3.6%から2.0%と、年々減少傾向となっているという報告です。

 こうした報告を目にすると、日本の65歳以上の高齢者のうち15%が認知症、これからどんどん増えていく、という推計はやや過大な危機感の演出のように思えます。

 

ピアサポートに支援

 しかし、認知症高齢者に対する対策を軽んじていい、ということではありません。

 臨床家の立場として、認知症本人や家族、そして介護者に対する支援は十分できていないというもどかしさがあります。さらに増加する高齢者に対して、対策が追いついていない、という危機感ももっています。

 そんななか、ひとつのニュースがありました。

 記事の内容を簡単にまとめます。

  • 2015年に策定された認知症対策の総合的な国家戦略(新オレンジプラン)をもとに、認知症の人や住民が支え合う地域づくりが進められているが、認知症介護者への支援が十分ではない。
  • 同じ病気や障害などの問題を抱える当事者らが集まるのは「ピアサポート」活動と呼ばれる。厚労省は認知症についても効果があるとみて、全国の自治体などにも取り組みを広げていきたい考えだ。備品代や会場使用料など経費の半額を補助する制度を新設する。
  • 認知症の人同士の交流を推進しようと、厚生労働省は2019年度から、こうした活動に取り組む自治体や民間への支援を強化する。厚労省は19年度概算要求に支え合い活動の経費として約5億6千万円を計上した。

 

新オレンジプラン

 厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の詳細はこちら。

www.mhlw.go.jp

 このなかで該当部分はこちらでしょうか。

4.認知症の人の介護者への支援

高齢化の進展に伴って認知症の人が増えていくことが見込まれる中、認知症の人の介護者への支援を行うことが認知症の人の生活の質の改善にも繋がるとの観点に立って、介護者の精神的身体的負担を軽減する観点からの支援や介護者の生活と介護の両立を支援する取組を推進します。

主な政策:【認知症カフェ】
認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有しお互いを理解し合う「認知症カフェ」等の設置を推進しています。地域の状況に応じて、様々な共有主体により実施されています。

 

 認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う場「認知症カフェ」を設置する、さらに認知症カフェを発展的に展開することで家族等への支援を充実させる、といった戦略が示されています。

 発展的な展開としては、

  • 認知症カフェ等を通じて顔なじみになったボランティアで一定の資質を有する者(例えば、認知症サポーターの上乗せ講座を 修了した者)が、認知症地域支援推進員の企画・調整の下、認知症の人の居宅を訪問して一緒に過ごす取組を新たに実施する(「認とも」)。
  • 認知症の人の家族を対象として、認知症に関する基本的な知識や介護技術の習得、関係制度への理解を深めるための介護 教室を認知症地域支援推進員の企画・調整を通じて開催し、家族の介護の身体的・精神的な負担の軽減を図る。

 といった具体策が示されています。

 ここを強化します、というのが今回のニュースのようです。

新オレンジプランの到達度

 さて、この新オレンジプランはうまく機能しなかったのでしょうか。先日「認知症の現況と新オレンジプランの概要」というレポートが公表されました。

 このなかで、認知症カフェの実施状況が報告されています。2014年度の状況と比較してみましょう。表を引用します。

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 2015年度の実績ですが、増えてきているようです。テコ入れをしようということですから、まだまだなのでしょう。

パーソナルソングも認知症カフェだった

 そういえば、こんどぼくが開催する映画上映・意見交換会。

 これもピアサポートを視野に入れていますから、「認知症カフェ」に該当しそうです。(そのつもりはなかったのですが。)

 関心のある方はお見逃しなく!

peatix.com

 次の企画がカフェ開催ですから、まさしく「認知症カフェ」企画となります。今後の活動に興味のある方は、こちらのフォローもお願いします。

comeo.peatix.com

認知症カフェのエビデンス? 

 ところで、認知症カフェのエビデンスはあるのでしょうか?

 国も財政支援するからには、根拠があるのでしょう。何か対策をすればいい、というわけではないはずです。活動にどんな意義があるのか、知りたいところです。

 調べてみたいと思います。

 

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