地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

つらい神経痛に何か薬はないですか?

質問

 帯状疱疹後神経痛がなかなか治らないのですが、何かいい薬はありませんか?

 

神経痛はつらい

 帯状疱疹後神経痛がなかなかよくならない高齢者にしばしば出会います。

 70歳以上では12か月後に85%が治癒するとの報告 *1 があり、自然に治ることが多いとされています。

 しかし、特に高齢者では痛みのつらさだけではなく、日常生活動作に大きな影響を与えることがあります。

 

 早く帯状疱疹ワクチン *2 が認可されるとよいのですが・・・。

 

 プレガバリン(リリカ)や三環系抗うつ薬、オピオイドなど、有効とされている治療はありますが、効果が十分ではなかったり、副作用が出たりするなど、なかなか高齢者への治療は簡単ではありません。

 

 そこで、外用薬の効果はどうか、あらためて調べてみました。カプサイシンは有名ですが、リドカインの論文がありましたので、よんでみました。

 

リドカイン外用 

メタ分析(Derry, 2014年) *3

研究の概要

 慢性の神経痛がある成人にリドカインの外用を行うと、プラセボまたは他の治療に比べて、患者本人申告の痛みや全般的改善度はよくなるのか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 12研究(508人)の結果を統合。このうち帯状疱疹後神経痛の研究は6研究。これらのうち、設定されたアウトカムで評価された研究はひとつのみで、質の低い小規模のランダム化比較試験 *4 であった。

 この研究では、「末梢神経痛症候群の患者に5%リドカイン湿布を2週間使用すると、プラセボに比べて痛みが改善するか」をクロスオーバー試験で検討している。ITT解析の結果は以下の通り。

  • 50%以上の痛み改善(ITT解析)リドカイン群 12/58人、プラセボ群 3/58人
  • 30%以上の痛み改善(ITT解析)リドカイン群 16/58人、プラセボ群 3/58人

 

4人に1人が有効

 残念ながら、メタ分析の採用基準を満たすランダム化比較試験は少なく、痛みの改善については質の低い1研究のみという結果でした。それも、帯状疱疹後神経痛の研究ではありませんでした。

 しかし、この1研究ではリドカイン外用の効果が示されており、治療必要数(NNT)は4.4となっております。一定の効果は期待できるかもしれません。

 

これからどうするか?

 他の治療を試みても効果がない場合や、副作用で内服治療ができない場合には、リドカイン外用は選択肢のひとつとなるかもしれません。

 今後の検討に期待したいところです。

 

*1:帯状疱疹の痛みは自然に治りますか? - 地域医療日誌

*2:水痘ワクチンで帯状疱疹の予防ができますか? - 予防接種の効果と害

*3:Derry S, Wiffen PJ, Moore RA, Quinlan J. Topical lidocaine for neuropathic pain in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jul 24;7:CD010958. doi: 10.1002/14651858.CD010958.pub2. Review. PubMed PMID: 25058164.

*4:Meier T, Wasner G, Faust M, Kuntzer T, Ochsner F, Hueppe M, Bogousslavsky J, Baron R. Efficacy of lidocaine patch 5% in the treatment of focal peripheral neuropathic pain syndromes: a randomized, double-blind, placebo-controlled study. Pain. 2003 Nov;106(1-2):151-8. PubMed PMID: 14581122.

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