超音波検査機器の進歩によって、より多くの情報量に早くアクセスできるようになってきています。
新しい道具は使いたくなるもの。しかし、その道具を使うことが果たしてよいかどうかは、科学的な検証を待って判断する必要があります。
今回は、肺炎の診断に超音波検査は有用か、という研究をご紹介します。
肺炎の診断は、一般的には胸部レントゲン検査、あるいは胸部CT検査などによって行います。超音波検査は日常的に用いられる検査ですが、肺炎の診断に対して活用できるか検証した、ということになります。
もし活用できれば、X線被曝もなくすことができ、有益な診断方法となるでしょう。さて、結果はいかに。
横断研究(Liu, 2014年)*1
- P▶ 救急部を受診し、市中肺炎が疑われた成人患者に
- E▶ 超音波検査、胸部レントゲン検査による肺炎診断は
- C▶ 胸部CTによる肺炎診断をgold standardとした場合
- O▶ 感度・特異度はどれほどか
- T▶ 診断、横断研究
《結果》※
超音波検査
感度 94.6% (106/112)、特異度 98.5% (66/67)、正診率 96.1% (172/179)胸部レントゲン検査
感度 77.7% (87/112)、特異度 94.0% (63/67)、正診率 83.8% (150/179)
胸部レントゲン検査に比べて、超音波検査のほうが優れた検査である、という驚くべき結果となっています。
中日友好医院の研究
さて、これは中国からの報告でしたが、実施された病院はこちらです。
Emergency Department of China-Japan Friendship Hospital, Beijing, China *2
日本政府の援助でつくられた、1500床規模の総合病院です。研究で使用されている機器を確認してみましょう。
超音波検査:Sonosite M-Turbo *3 ultrasound machine equipped with a 3.5– 5 MHz convex array probe
X線検査:MUX-100DJ, Shimadzu, Japan
CT検査:Aquilion TSX-101A, Toshiba, Japan
Sonositeは日本でもおなじみでしょうか。
研究デザインについては、マスキングが適切に行われているようで、大きな問題点はなさそうです。
肺炎の超音波所見
この研究で採用されている、肺炎の超音波所見は以下の4つのうちのいずれかです。
- Lung consolidation
- Focal interstitial pattern
- Subpleural lesions ≥2
- Intercostal spaces with pleural-line abnormalities ≥5
1.はいわゆるコンソリデーションが超音波で確認されたもの、2.はいわゆるBライン、3.は胸膜に接した低エコー領域、4.は胸膜の2mm以上の肥厚像となっています。
原著には画像が掲載されていますので、ぜひご覧ください。
この論文からは、肺炎の診断に超音波検査はかなり有用、という印象です。レントゲンを使わなくなる時代がくるかもしれません。
低浸襲の超音波検査、研究はこれからさらに進むでしょう。
肺炎の診断に超音波検査は有用
- 肺炎の超音波検査所見には4つの所見がある。
- いずれかの所見があると、肺炎の感度95%、特異度99%となり、肺炎の診断には有用な検査である。
*1:Liu XL, Lian R, Tao YK, Gu CD, Zhang GQ. Lung ultrasonography: an effective way to diagnose community-acquired pneumonia. Emerg Med J. 2014 Aug 20. pii: emermed-2013-203039. doi: 10.1136/emermed-2013-203039. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 25142033.
*2:China-Japan Friendship Hospital
About us-China-Japan Friendship Hospital
*3:株式会社富士フイルムソノサイト・ジャパン SonoSite Mシリーズ M-Turbo(エム・ターボ)
※株式会社富士フイルムソノサイト・ジャパンは、平成28年7月1日付で、親会社である富士フイルムメディカル株式会社に吸収合併され、統合いたしました。