地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

ガムで病気を予防?

 腹部の手術後に合併症として腸閉塞(術後性イレウス、POI)を起こすことがあります。これを予防するためにチューインガムを使ってはどうか、ということを検証した研究を紹介します。

ランダム化比較試験(van den Heijkant、2015年) *1

P▶ 開腹の大腸直腸手術(待機的)を受けた18歳以上の人が
E▶ 市販のシュガーレスガムを手術3時間前から1時間3枚以上噛み始め、手術3時間後以降、可及的速やかににガムを再開すると
C▶ ガムを噛まず(皮膚パッチを使用)に比べて
O▶ 術後5日の時点でのPOIの発症は少ないか、入院期間は短いか
T▶ 治療、ランダム化比較試験

《結果》★★★
対象患者は120人。ランダム化後脱落 8人。
POI発症は112人のうち43人(38.4%)。
E群 14人(27%)、C群 29人(48%)とE群で有意に少ない(p=0.02)。
入院期間はE群 9.5日、C群 14.0日とE群で短い傾向も有意差はない。

 

 PROBE法ではなくオープン試験となっていること、脱落の影響など気になる点はありますが、チューインガム群でPOIが少ないという結果でした。

 POIの定義はこのようになっています。

POI was defined as lack of passage of flatus or stool and intolerance to oral intake for at least 24 h.

 

 イレウスで24時間経口できない状態がつづけばPOIと定義されていますが、C群でのPOIが48%というのは、ちょっと多いように思います。

 いずれにしても、副作用も少なく簡単な方法ですので、予防策として定着されるでしょうか。

 

*1:van den Heijkant TC, Costes LM, van der Lee DG, Aerts B, Osinga-de Jong M, Rutten HR, Hulsewé KW, de Jonge WJ, Buurman WA, Luyer MD. Randomized clinical trial of the effect of gum chewing on postoperative ileus and inflammation in colorectal surgery. Br J Surg. 2015 Feb;102(3):202-11. doi: 10.1002/bjs.9691. Epub 2014 Dec 18. PubMed PMID: 25524125.

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