質問
レストレスレッグス症候群に貼り薬は効くのでしょうか?
少し前の記事になりますが、パーキンソン病の貼り薬はどうですか? - 地域医療日誌のつづき記事です。(情報収集して記事を書きかけたまま、放置していました。)
以前の記事では、非麦角系ドーパミンアゴニスト、ロチゴチンの経皮吸収型貼付剤「ニュープロ®パッチ」のパーキンソン病に対する効果について、ご紹介しました。
ロチゴチン経皮吸収型貼付剤は、プラセボに比べてパーキンソン病重症度スコアの改善度が大きいが、有害事象による脱落が1.8倍多い。
パーキンソン病の貼り薬はどうですか? - 地域医療日誌
レストレスレッグス症候群にも
ロチゴチンはレストレスレッグス症候群にも効能があります。「ニュープロ®パッチ」の添付文書には、以下のように記載されています。
効能又は効果
ニュープロ パッチ2.25mg、同パッチ4.5mg
ニュープロ パッチ9mg、同パッチ13.5mg
- パーキンソン病
- 中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)
- パーキンソン病
効能又は効果に関連する使用上の注意
レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)の診断は、国際レストレスレッグス症候群研究グループの診断基準及び重症度スケールに基づき慎重に実施し、基準を満たす場合にのみ投与すること。
レストレスレッグス症候群に対しては、中等度から高度のものに限定され、さらに慎重に診断して適用をよく吟味するように注意、とまで記載されています。
気軽に使わないように、ということでしょうか。
確かに有害事象が多いことは少し気になるところです。そのあたりをくみ取り、まずは効果についてよく検討したいと思います。
ニュープロパッチの効果は?
日本人のランダム化比較試験がありましたので見ておきましょう。
ランダム化比較試験(Inoue, 2013年)*1
研究の概要
20~80歳のレストレスレッグス症候群と診断された人がロチゴチンパッチ 2mg/24時間または3mg/24時間を13週間使用すると、プラセボに比べてInternational Restless Legs Syndrome Study Group rating scale (IRLS) total score *2 は改善するか、を検討した日本のランダム化比較試験。多施設、二重盲検、第三相試験。
主な結果
284人がランダム割り付けされ、ITT解析されている。
IRLS total scoreの介入前からの変化(平均±SD)はロチゴチンパッチ2mg群では14.3 ± 8.9、3mg群では14.6 ± 9.0、プラセボ群では11.6 ± 8.2。プラセボとの平均差(95%信頼区間)はロチゴチンパッチ2mg群で2.8 (5.3 to 0.3) 、3mg群では3.1 (5.6 to 0.6) といずれもプラセボ群よりIRLSスコアの改善度は大きかった。
有害事象はロチゴチンパッチ2mg群では76人/95人(80.0%)、3mg群では81人/94人(86.2%)とプラセボ群49人/95人(51.6%)より有意に多かったが、重篤な有害事象は少ない。
スコアは3点差
ロチゴチンパッチを使うと40点満点のIRLSスコアで約3点差がついた、という結果となっています。
統計学的に有意であれば、臨床的にも有効と判断できるとは言えません。論文中にIRLSスコアの臨床的に有意な最少変化量(minimal clinically important difference; MCID)についての記載はなく、この差をどうとらえればよいのか、よく考える必要がるでしょう。
さらに、やはりこの研究でも有害事象は多くみられています。多くなっているのは主に貼付部位の局所反応、嘔気、傾眠傾向などですが、注意が必要でしょう。
いずれにしても、使用については他の選択肢も含めて慎重に検討したいところです。
レストレスレッグス症候群に貼り薬はどうですか?
- ロチゴチンパッチは中等度から高度のレストレスレッグス症候群に保険適用がある。
- 日本のランダム化比較試験では、プラセボに比べてIRLSスコアで約3点改善度が大きかった。
- 有害事象は多いため、治療は慎重に検討したい。
*1:Inoue Y, Shimizu T, Hirata K, Uchimura N, Ishigooka J, Oka Y, Ikeda J, Tomida T, Hattori N; Rotigotine Trial Group. Efficacy and safety of rotigotine in Japanese patients with restless legs syndrome: a phase 3, multicenter, randomized, placebo-controlled, double-blind, parallel-group study. Sleep Med. 2013 Nov;14(11):1085-91. doi: 10.1016/j.sleep.2013.07.007. Epub 2013 Aug 21. PubMed PMID: 24055212.
*2:IRLSはRLSの重症度、頻度、日中の疲労・気分などの計10項目を4段階で評価するもので、40点満点中、0~10点は軽症、11~20点は中等症、21~30点は重症、31~40点は最重症とする。