地域医療日誌

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緊急対策でも年間1万2千人、これでは風疹対策はうまくいかない

 

 

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風疹5年ぶりの流行

 風疹が流行しています。東京都の流行状況はこちら。

東京都感染症情報センター » 風しんの流行状況(東京都 2018年)

 

 2013年にも風疹の記事 *1 を書いていますから、5年ぶりの流行ということでしょう。

 当時は広報の効果もあってか、風疹ワクチンの需要が一時的に急増しましたが、残念ながら5年後の流行は予防できませんでした。

 

 このブログは、風疹についての基本情報を提供することが目的ではありませんので、そのような情報が必要な方はこちらをどうぞ。

www.mhlw.go.jp

 

緊急対策で接種したのはたった年1万2千人

 前回の風疹流行児の対策をふりかえっておきましょう。

 都は、平成24年夏以降の全国的な風しんの流行状況を踏まえ、平成25年3月から緊急対策として、妊娠を予定又は希望する女性等に対する予防接種を行う区市町村への補助事業を開始し、各区市町村の協力のもと、都内全ての区市町村で接種が受けられる体制を整備しました。  

 一方、国は「風しんに関する特定感染症予防指針」を平成26年3月に策定し、中長期的な視点に立った取組を進める方針を示すとともに、平成26年4月より妊娠希望女性等に対する抗体検査を行う都道府県、特別区及び保健所設置市への補助事業が実施することとなったため、都では先天性風しん症候群発生防止に向けた取組として、各区市町村と協力し、抗体検査と各区市町村が実施する予防接種を組み合わせた形で実施していくことといたしました。

風しん対策・先天性風しん症候群発生防止に向けた取組 東京都福祉保健局

 

 この対策の問題点は何だったのでしょう?

 実際にワクチンを接種した人数をご確認いただくとわかります。

 この予防接種促進事業(先天性風しん症候群対策分)で、風しん含有ワクチン被接種者数はたったの年間約1万2千人。2014-2016年までの3年間で合計約3万6千人だったのです。

 まさしく焼け石に水です。

 

都がさらに残念な緊急対策

 保健医療政策の失敗、「屈辱的」な風疹の流行をうけて、東京都があわてて緊急対策を出しています。

 緊急対策というからには、男性を加えたすべての成人への対策になるかと期待しましたが、なんとも残念な対策になっています。

 10月26日付の日本経済新聞ウェブ版から。

  • 首都圏を中心に流行が拡大している風疹について、東京都は26日、緊急対策として妊婦の夫ら同居者が無料で抗体検査を受けられるようにすることを決めた。ワクチン接種の費用も一部補助する。
  • 従来はワクチン接種が確認できない妊婦や妊娠を希望する女性が対象だったが、同居者にも対象を広げる。
  • 都内の区市町村と連携し、同日から順次始めるという。
  • 2018年の都内の患者数は10月21日までに510人。患者数の8割近くを20~50代の男性が占めた。

 

感染症対策後進国、返上ならず

 妊婦の夫ら同居者のみ、それも抗体検査の無料化、という表面的な対策。

 科学的根拠に基づかない政策決定ですから、世論の火消しのための小手先の対策、といった印象はぬぐえません。

 風疹、そして先天性風疹症候群が発生してしまう「感染症対策後進国」日本では、「すべての成人」を対象とした「風疹ワクチンの接種」が望まれます。

 抗体検査ではなく。

 予算の制約と反論されても、すでに費用対効果まで確認されていること。あとは予算配分の問題でしょう。

 過去の緊急対策の反省もなく、流行してからキャンペーンをはじめても遅すぎ、さらに追加緊急対策のお粗末さから、少なくとも風疹を根絶しようという気概は、まったく感じられません。

www.bycomet.tokyo

 日本はいつまで科学的根拠に基づかない保健医療政策が行われるのでしょうか? 正直、あきれています。

 こうしたことは、ほんの氷山の一角にすぎないところが、医療現場のおそろしいところなのです。

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