地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

地域医療に影響を与える懸念とは?

 

 備忘録です。2018年度から開始されるとされる「新たな専門医制度」について。

 

厚生労働大臣談話

 2017年8月2日、厚生労働省大臣から談話という形で文書が公開されています。

www.mhlw.go.jp

制度導入を一年延期

 当初は2017年度からの新制度導入の見通しで、準備が進められていました。

 しかし、2016年6月、日本医師会及び四病院団体協議会から、新制度の導入によって地域医療現場が混乱する等の懸念がある、との意見が出されました。

 そこで、いったん制度導入を一年延期する決定がくだされ、これまで議論を重ねてきたようです。この一年の経緯については、このように書かれています。

  • 日本専門医機構におかれては、地域医療関係者や地方自治体を加えた体制を整備するなど、ガバナンスの抜本的見直しを図ってこられました。
  • 厚生労働省においては、本年4月に「今後の医師養成の在り方と地域医療に関する検討会」を設置し、専門医制度の在り方について、全国知事会や全国市長会、病院団体など地域医療関係者の方々が加わった場で意見交換を行って頂きました。

 

地域医療への影響を払拭できなかった 

 このような議論の積み重ねをふまえ、下記の内容が整備指針等に明記されることのより、地域医療に影響を与えないような配慮がなされたと理解されているようです。

  • 専門医の取得は義務ではなく医師として自律的な取組として位置付けられるものである
  • 研修の中心は大学病院のみではなく症例の豊富な地域の中核病院等も含むことの明確化
  • 女性医師等の多様な働き方に配慮したカリキュラム制の設置

 

 このようなことで、対策がとれるのか実効性には疑問が残る内容です。

 談話にも、これだけでは地域医療の影響に対する不安を払拭できない、と書かれています。

 他方、来年度より実施する新たな専門医制度は、プログラム制の導入など、これまでに無い新たな仕組みであり、

〇実際の専攻医の応募の結果、各診療科の指導医や専攻医が基幹病 院に集中することで地域医療に悪影響が生じるのではないか、

〇専攻医がその意思に反し、望んでいる地域、内容での研修を行えなくなるのではないか

などの懸念を完全に払拭するには至っておりません。

 

結局、事後対策へ

 そこで、都道府県協議会との協議、厚生労働省への報告、影響がある場合には厚生労働省から対応を求める、といった対策が盛り込まれたようです。

 新たな仕組みの開始に当たっては、こうした懸念に真摯に向き合い、都道府県、市町村、医師会、大学、病院団体等からなる都道府県協議会等地域医療関係者と十分に協議が行われたうえで、運用の中で問題があれば速やかに是正が行われる必要があると考えています。

 具体的には、日本専門医機構及び各関係学会に対し、学会ごとの応募状況及び専攻医の配属状況を厚生労働省に報告いただくことを求めます。厚生労働省においては、新たな専門医制度が地域医療に影響を与えていないかどうか、領域ごとに確認をすることとしたいと考えております。

 その結果、万が一、新たな専門医制度によって地域医療に影響を与える懸念が生じた場合には、「国民に対し良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制」を確保する医療法上の国の責務に基づき、厚生労働省からも日本専門医機構及び各関係学会に対して実効性ある対応を求めることといたします。

 

 新制度導入が一年延期されたわけですが、残念ながら議論が深まっておらず、準備も不十分です。

 

地域医療に影響があるというのはどういった事態か 

 地域医療に影響がある、というのはどのような定義になるのでしょうか。国や自治体の主観的な判断でしょうか。

 協議会ではどのような基準で協議されるのか、厚生労働省はどのような場合に介入するのか、新制度を導入する以上、明示すべきではないでしょうか。

 

 一年延期して整備すべきだった最も重要な部分に切り込めていません。「地域医療への影響」という曖昧な表現でごまかし、深刻な課題が解決されないまま制度を走らせるつもりのようです。

 これは、まだまだ混乱が予想されます。

 

 日本専門医機構の動向を注視していきたいと思います。

一般社団法人 日本専門医機構

 

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