地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

健康な人のコレステロール下げると危険?

 つづきます。

 

 さらにおそろしい実態をご紹介していきましょう。

 リスクが低い人にはコレステロールを下げる治療効果が小さくなる、ということをご紹介しましたが、治療効果が小さいばかりか害があるかもしれない、という研究もあります。

 もちろん、これはたまたま悪い結果が出た1つの研究を紹介しているわけではありません。

 システマティックレビューという手法で過去の研究を検索して質が高い研究のみを厳選し、その結果を統合したメタ分析という研究の結果です。

リスクの低い人ではメリットがない

メタ分析(Smith, 1993年) *1

研究の概要

 冠動脈疾患の既往がある成人または既往のない成人に脂質低下療法(食事療法を含む)を行うと、行わないのに比べて総死亡、冠動脈疾患死亡、冠動脈疾患以外の死亡は少ないかを検討した、治療に関するランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 35のランダム化比較試験の結果を統合。結果を冠動脈疾患死亡1000人年当たり50人以上の高リスク群、10-50人の中リスク群、10人未満の低リスク群に分けて解析。

 主な結果を表にまとめた。

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 冠動脈疾患死亡が1000人年当たり10人未満の低リスク群(10のランダム化比較試験の結果を統合)では、脂質低下療法を行うと冠動脈疾患死亡が1.15倍、総死亡が1.22倍多くなる傾向がみられた

 

治療すると死亡が増えた

 1993年の歴史的なメタ分析です。

 研究は一次予防と二次予防が混在しています。また、治療も食事療法のみのものから種々の薬物療法までが混在しています。

 そもそも冠動脈疾患死亡の少ない健康な低リスク群では、脂質低下療法を行うと逆に冠動脈疾患死亡や総死亡が増えているかもしれない、という結果です。

 中リスク群でさえも、統計学的な有意差がみられていません。

 

 脂質異常症の治療は高リスクの人にとっては有用でも、すべての人に有用とは限らない、ということでしょう。

 さらに新しいメタ分析が出ていますので、つづけて紹介していきたいと思います。

 

もはやコレステロールを下げる意味がなかった - 地域医療日誌

*1:Smith GD, Song F, Sheldon TA. Cholesterol lowering and mortality: the importance of considering initial level of risk. BMJ. 1993 May 22;306(6889):1367-73. Erratum in: BMJ 1993 Jun 19;306(6893):1648. PubMed PMID: 8518602; PubMed Central PMCID: PMC1677836.

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