地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

丸山ワクチンの怪

 

 覚え書きです。

 最近、丸山ワクチンがなぜかしら話題になっているようです。週刊誌などを賑わすにはなにか思惑があってのことでしょう。注目しておきたいです。

 丸山ワクチンの歴史的経緯については調べる気もしませんでしたが、ごくまれに投与を希望される方もおります。

 あまり詳しく知りませんでしたので、情報を拾ってみました。

 あくまでも覚え書きです。

 

効果がないので「有償」治験?

 丸山ワクチンは昭和19年、皮膚科医で日本医大元学長の丸山千里氏が皮膚結核の薬として開発、昭和30年代からがんの治療に転用する研究が行われています。

 昭和51年、がんの治療薬としての製造承認を求める申請が厚生省(当時)に出されましたが、「がんに対する効果は認められない」と昭和56年に却下。

 しかし、例外的に患者が実費を負担する「有償治験薬」としての使用が認められ、今日に至っています。現在使われている丸山ワクチンは、あくまでも治験としての使用という建て前になっています。

 40年を経過して、臨床効果が確認されたという報告はまだありません。

 

国会の審議はどのようなものだったのか?

 当時の国会の審議はどのようなものだったのでしょうか。議事録を確認しておきましょう。引用させていただくのは、2つの会議録です。

衆議院会議録情報 第094回国会 社会労働委員会 第20号

参議院会議録情報 第095回国会 社会労働委員会 第3号

衆議院の会議録から

 まずは第094回国会 社会労働委員会 第20号、昭和五十六年七月三十日(木曜日)の会議録からみていきましょう。膨大な量のため一部抜粋しながら紹介してみます。原文は会議録を直接ご覧ください。

○山下委員長 *1 ...かような社会的背景の中に丸山ワクチンの有効性についての問題が大きく取り上げられてきており、中央薬事審の抗悪性腫瘍剤調査会においてはすでに十日に「有効性は確認できなかった」という結論が発表されましたし、特別部会でも二十八日に調査会とほぼ同趣旨の内容のものが公表され、あとは来月七日に予定されている最終審の常任部会の発表を待つばかりとなっています。  

 にもかかわらず、関係ある諸団体等から、この問題について社会労働委員会においても国民の納得のいくような審議を尽くすべきであるという趣旨の請願、陳情書、意見書等が委員長あてに多数提出されており、これらにこたえ、かつ世論に対して国会がこの問題を究明するのは必然のことであるという立場から、本日の委員会を開会することになった次第であります。 

 

 効果がないという結論に対して、「関係ある諸団体」等から請願・陳述があったために開催されたということです。

 参考人として、癌研究会癌化学療法センター所長の桜井 鉄夫君が次のように発言されています。

○桜井参考人 私、調査会 *2 の座長を仰せつかっておりますので、このたびの丸山ワクチンの審査につきまして簡単に御報告を申し上げます。

 この調査会と申しますのは、ただいま六人の臨床の先生と六人の基礎の先生と、私を含めまして十三人で運営をいたしております。問題につきましては各人がその専門領域で逐次検討をいたしまして、その後でこれを総合的に討論をいたします。そしてその結果を座長が取りまとめまして、これを皆様の御了承を受けまして、上部部会でございます特別部会に伝えるという仕事でございます。  

 この丸山ワクチンにつきましては、結論といたしましては、もうすでに御承知のことと存じますが、提出されました審査資料というものについて検討いたしました限りにおいて、これの有効性を実証することが困難であったということでございまして、これを特別部会に上程したわけでございます。  

 その理由の要点を申し上げます。  

 一つは、薬といたしまして最も大切なことは規格というものでございまして、簡単に申しますと、その薬がいつ何どきお医者様の手に入りましても、常に同じものであって同じ効力が保証されておるということを決めます規定と、それを実証いたします実験方法が確立をしておる必要がございます。この点、丸山ワクチンの規定、規格につきましては不安なところがございました。それは、効果を決めます動物実験のやり方につきまして、その実測の方法が常識的に考えましても非常にむずかしい、細かな数字を出すことができないということが委員の専門の方々の御意見でありまして、それを皆さんが納得したという点で、規格に不十分なところがあるということが一つでございました。  

 それから次は、一般の安全性の問題でございます。  

 これはいわば毒性の試験でございます。これにつきましては、一般の薬物といたしましてはいささか実験に不足がございます。具体的に申しますと、一定のドーズ、薬の量で試験がしてあって、その用量と作用との関係が出ていないということでありましたけれども、これは丸山ワクチンというお薬が、臨床に使われますときは非常に微量でございまして、一日に千分の二ミリグラム使うというようなことでございますので、そのことを勘案いたしますと大して重大な問題ではないであろうというのが皆様のあれで、その安全性については決定的な問題はないということでございました。もちろん、薬として課せられておりますいろいろな実験につきましては、もう少しこういう実験をしなければならぬということが指摘されてはおります。  

 それから、いろいろな動物のがんを使いまして、丸山ワクチンが効果があるかどうかという実験がなされております。これにつきましては、数種のネズミのがんで有効性が証明されております。ただ、そのときに使う量は、もちろん人間の量に体重比で比較いたしますと二百倍とか五百倍とかいう量が必要なものが多いのでありますけれども、これは必ずしも人間に対する効果を否定するものではございません。少なくともネズミの一種類の腫瘍、がんにつきましては、人間の使用量の二十五倍というようなところで若干の抑制効果が出るという結論が出ております。  

 この作用機作については、どうしてネズミのがんに効くのかということについてはよくわかりません。しかし、この丸山ワクチンを注射いたしますと、あるネズミの血の中にインターフェロンが出てくるという実験がございまして、大変興味あるものでございます。ただ、現状におきまして、インターフェロンががんに対してどういう効果を発揮するかということはただいまも広く臨床試験が始まっておりまして、インターフェロンの制がん効果に対しては現在検討中でございますけれども、まだ結論が出ておりません。  

 臨床試験につきましては、これは最も重要なことでございますが、その結果につきましては、もう御報告あるいはいろいろな報道がなされましたし、時間的にもございませんので、詳しく申し上げるいとまはございません。しかし、一言所感を述べさせていただきますと、臨床試験といいますものは、制がん剤の開発では最も大事なところでございます。ことに免疫治療剤につきましては、現有のところ、少なくとも詳細な理論的展開は過去四年か五年ぐらいからの歴史しかないわけでございます。したがって、基礎実験のデータからこれは人間に効くであろうという予言をいたしますことは、一般の制がん剤の研究に比べてさらにはるかに困難でございますので、効果の判定は臨床領域、臨床の先生方の御判定に待つことがきわめて大きいということでございます。  

 この臨床の成績の中で最も慎重に行われました東北大学を中心とするものと、愛知がんセンターを中心といたします二つの比較臨床試験のデータをよく検討いたしました。これは臨床の先生が非常に詳しく検討をされたのであります炉、たとえば愛知がんセンターの研究の例を見ますと、後層別をいたしまして、不完全な手術を行われた胃がんの手術の中で腹膜に転移のある者を分けて層別をいたむますと、非常に有意な丸山ワクチンの効果が出ている例がございます。ただし、こういうふうに後層別をしておりますので大変少ない例になってしまいますので、こういう点は、これをもう一回数をふやして検討に値するものであろうというような意見もございました。私も同感でございますが、そのためには、先ほど申し上げました薬の規格の安定性というものをしっかりしてからやっていただきませんとまた問題が起こるのではないかということを痛感いたしております。時間が来たようでございますので、私が申し上げたいことはここまでにいたしたいと思います。

 

 東北大学と愛知がんセンターの2つの臨床研究があるようですが、その内容について、当時は議論があったようです。

 

 この調査会における桜井座長の姿勢について、疑惑が持たれることになります。クレスチン、ピシバニールに対して早々に認可を出しておきながら、丸山ワクチンについては厳しく審査しているのではないか、それには製薬企業との関係があるのではないか、というものです。

 

 この疑惑を追究しているのが、菅直人委員です。

○菅委員 公正を担保するあらゆる努力をしていただけるということで、この点についてもう一つだけ申し添えておきたいのは、いま大臣みずから言われました従来の基準ですけれども、これはきょうの参考人の意見の中にもありましたように、もともといわゆる免疫療法の基準ではたしかないはずなんですね。いわゆる抗がん剤と言われるがん細胞を直接攻撃する薬に対しての基準であって、その基準も見直さなければいけないということで補助金をとられて、きょう来られた桜井さん自身がまたそれの研究をされて新しい基準に近いものをつくったりして、その中にも比較臨床実験といった問題が入っているわけです。ですからある意味では、今回丸山ワクチンについて本来審議されるべき内容は、私はまさに比較臨床実験のデータをどう見るかということだと思うわけです。  

 それがきょうの朝からずっと議論があったわけですけれども、私もいろいろな方と話をしていると、どうも常にすりかえがあるわけです。それじゃ従来と同じにやりましょう、従来と同じであればがんが縮小する効果は丸山ワクチンには認められないから、それならだめですよ。そして延命効果は、これは確かに有意差はあるが、臨床的には有意義でないなどと桜井さん言われていましたけれども、そういった言い方で逃げてしまう。それじゃクレスチン、ピシバニールについて延命効果が調べられているかというと、これまでのデータによればこれは全くないわけです。そういう点では、丸山ワクチンの基本になっている判断というのはまさに免疫療法に適する初めての判断だということをよく御理解いただいて、それを公正にやっていただきたい。そういう意味では単純な比較にならないものをいつも比較している、私が申し上げたのはそういう意味なんです。  

 それを含めて次の問題に移りたいのですが、中央薬事審議会のいろいろな規定の改正等を報道で、また個別にも私伺っているのですけれども、きょうの先ほどの議論では、たしか薬務局長でしたか、その評価等について議事に加わらない等の運営をやりたいということを言われていましたね。しかし、前回、三月十九日に私が局長にいわゆる一人二役のことについて具体的にお聞きしたときに、「自分の意見を通常控える、これが慣例になっている」という形で薬務局長は答えられているわけです。  

 しかし、その後いろいろわかったところによると、桜井さん自身ですけれども、座長として全部の意見を自分で取りまとめて、特別部会に持っていって、その中でも審議に加わり、さらに常任部会まで行ってクレスチンについても加わっているわけです。それを局長は、「自分の意見を通常控える、これが慣例になっている」から公正なんだということを私に対して言われたわけなんですね。今回また、評価等について議事に加わらないという言い方をされているのです。半歩ぐらいは進歩していますけれども、これじゃ単なる審議会の中の慣例を、内部的な規定を多少変えるだけにしかならないんじゃないですか。  

 本来、中央薬事審議会のメンバーの選任は審議会令、薬事法三条に基づく政令で決っているはずです。ですから、当然選任の問題については少なくとも政令で決めなくてはおかしいし、これまでの経緯がそういうことを示していると思うわけです。  

 ついでに言えば、こういった選任の問題でどういう人を外さなければいけないかということと同時に、いわゆるデータの公表、特に認可が終わった後についてはすべてのデータを公表するといった公表の制度の義務化、もう一つは、これは私の提案なんですが、異議申し立て制度ですね。いま事実上薬の認可については、おかしいと言って厚生大臣にあてて異議申し立てができたとしても、中央薬事審議会に対する異議申し立てというのは審議会ですからできないわけです。しかし実質的にはそこで決まっているわけです。ですから、中央薬事審議会に対して一定の結論が出た段階で異議申し立てができるような制度の導入、つまり委員の選任の問題に加えて、公表と異議申し立て制度の導入をぜひ検討いただきたいと思うわけですが、大臣なり局長なり、いかがお考えでしょうか。

○山崎説明員 具体的な御提案でございます。先ほども私が答弁いたしましたが、先般菅先生からお尋ねがありましての答弁の趣旨は、俗な言い方をすれば一人二役、そういうことでデータを作成した委員がそのデータについて審議の場にたまたま一致することがあり得る、これはいまの実態から見てやむを得ないことであろう、こういうふうに私は思っておるわけでございます。  

 ただ、そのあり得た場合にそれをどう解決していくかという、そういう調整の問題として考える場合に、それを公正の担保という見地から考えてみますると、いまのやり方というのは、要するにそのデータ、論文が審議会の皆さん、たとえば十三名の方々全部に渡りまして、名前も列記されておるわけで、仮に知らない方がいらしても、あ、これはあの委員の論文であるかということはその場でも十分わかるわけです。そうなればそのデータを作成した当該委員の方は、このデータについての評価なり何なりについて当然その身を控えてのことになる、こういうことで申し上げているわけでございまして、そういう意味が慣例化しているので、それを規定に書きたい。これは選任の問題でなくて運営の問題であるといまのところ私ども考えておるわけでございまして、そういう意味で、政令の問題ではなくて審議会規程自身の問題として解決したい、こういうことでございます。  あと、公表の義務化あるいは異議申し立ては、それぞれ今後の課題にさせていただきたいと思います。

○菅委員 これはあえて大臣にお聞きしたいのですが、いまの問題で運営の問題だというふうに言われましたけれども、たとえば薬メーカーの社員、端的な例で言えば研究所にいる社員とかまたは取締役とか顧問とか、そういう関係者が中央薬事審議会の認可に携わる委員になっている可能性というのは、もしそういうことがあったとしたら、これは適正なんでしょうか、どうでしょうか、大臣。

○村山国務大臣 かなりいろいろな疑惑を招く要素にはなると思います。ただし、この運営をどうするかという問題をもうちょっと詰めてみなければならぬと私自身は思っております。そういうことを総合的に判断いたしまして、いやしくも公正について疑われることがないように考えてみたい、かように思っております。

○菅委員 局長には個別にいろいろレクチュアを受けたりしたときにもお伺いしたのですが、同じことなんですけれども、そのときには、薬メーカーに関係をしているそういった人は認可の過程に携わる委員にはしていない、あった場合にはそれは遠慮してもらうことになるだろう。これは、私がそうなるのですかと聞いたときにそういう趣旨のことを個別には言われたわけですが、その点について薬務局長、そのとおりですか。

○山崎説明員 個別の医薬品の承認、こういう任務を負っているたとえば抗悪性腫瘍剤調査会なり新医薬品第一調査会に、本来の職務としての製薬会社の役員が参加していることはございません。

○菅委員 大臣は午前中の私の質問のときにちょうど退席されていたのでお聞き漏らしになったかと思いますけれども、薬務局長はおられたのに聞いておられなかったのかもしれませんが、プロテクトンという薬、これは吉富製薬がいま販売をしているわけですが、これの基本特許を持っておられるのは先ほどの桜井先生なわけです。ここに特許の公報もありますが、御本人も認められました。そして吉富製薬の顧問をやっておられるわけです。これも御本人が認められております。つまり、会社へのかかわり方というのはいろいろありますけれども、社員であること、取締役であること、そしてこの薬についてはみずからが最初に開発をしてオリジナルな基本特許をとって、そしてそれを吉富製薬と組んで製品化をされて、顧問にもなられている。しかも自分が審議委員になって、抗悪性腫瘍剤調査会の座長になって半年目に調査会に申請を出しているのですね。そして自分の手で許可を出して、いま実際に売られているわけです。  

 局長、これはどういうことなんですか、それは会社に関係がないと言うのですか。御本人が吉富製薬の顧問であることを認められたわけですよ。

○山崎説明員 会社の役員でそういう新薬の承認に関係する調査会の委員になっている方はいらっしゃいませんというふうに申し上げたわけでございまして……。

○菅委員 それはおかしいじゃないですか。先ほどそんなことは言われませんでしたよ。それから、私が昨日個別に話したときもそういうことを言われなかった。それでは顧問はいいと言うのですか、報酬を受けている顧問は構わないと言うのですか。おかしいじゃないですか。

○山崎説明員 製薬メーカーとの関係の度合い、濃度、密度、いろいろあると思うのでございます。少なくとも桜井先生の場合、御本職は財団法人癌研究会に属しておられるわけでございまして、その吉富製薬の顧問というものがどういう具体的なかかわりを示すか、それは実態との絡みで判断しなければならないのではないか、こういうふうに思っております。

○菅委員 この特許は四十年ごろ出ているわけですけれども、私が漏れ伺っているところによれば、その当時から、それに近い時期から吉富製薬におられて、そしてその後癌研に来られたというような経緯も聞いているわけですね。その立場、立場でいろいろなものにダブられていたかもしれませんが、かなり長期間にわたって顧問を続けられているということなんですね。これじゃ同じことじゃないですか、会社のことと。どうなんですか、それは。こういう人は外すという約束を先ほどされたばかりじゃないですか。

○山崎説明員 でございますから、何といいますか、選任の問題その他についても課題にしなければなりません。ただ、その方の御本職あるいは別の会社とのかかわり合いというものは、その派生する問題としてこれまた十分考えさせていただきたいと思います。

○菅委員 それじゃ大臣に直接お尋ねしますけれども、私はこれは約束からいってもおかしいと思うのですよ。つまり、それは会社には社員もある、取締役もある、顧問もある、監査役もある、いろいろな関係があります。しかし、相当長期間にわたって会社の顧問をやっておられたことを御本人が認めている。それを本職はこうであったからこうでないとか、それは全く認められないと思うのですよ。こんなことだったら何を聞いても、いや、そんな形式は、それじゃ給料が安かったからあの人は関係ないとか、ほかにも仕事を持っていたから関係ないとか、そんなことを言われていたんじゃ話を聞いたって意味ないじゃないですか。  

 大臣はこの問題をどうお考えですか。適任じゃないでしょう。ちょっとついでですけれども、桜井さん御自身がきょう朝のこの席で、そういうことを含めて適任ではないんじゃないですかと私が申し上げたら、私も適任じゃないと思いますとみずからおっしゃったわけですよ。大臣はどうなんですか。

○村山国務大臣 先ほども申し上げましたが、具体的な名前は別に差し控えさせていただきますが、疑いを持たれるようなことはないようにいたします。

○菅委員 それは現時点で、将来ということではなくて、現時点の抗悪性腫瘍剤調査会を含めて疑いを持たれないようにされるというふうに理解をしていいわけですね。

○村山国務大臣 その時期その他は私にお任せ願いたいということを申し上げているわけでございます。

○菅委員 しかし、いま丸山ワクチン問題がここまできている段階で、将来の先の先の話ではないわけですよ。その中に不適任者がいるということなのです。つまり、抗悪性腫瘍剤調査会の一番重要なメンバーである座長が不適任者だと本人みずから認めている。その人物がいまなお座長として、このままいけば常任部会に出ていかれるわけですね。それを少なくとも常任部会が始まるまでに、国民の疑惑を招かないような形にちゃんと処理されると約束していただけませんか。

○村山国務大臣 先ほども申し上げたのですが、少なくとも私の心証は、きょうずっと参考人の四人の方の話を伺いまして、どういう立場にあるかということはつまびらかにいたしませんけれども、きょう発言を聞く限り、それぞれの立場で本当に学者として真剣にやっているという心証を私は受けておるわけでございます。全くそれぞれの考えが違いますけれども、端的にそれぞれの立場で学者としての意見を述べているように私には思われるわけでございます。  

 しかし、おっしゃるように疑いを受けるようなことはやはり今後は避けなければならぬ、こう思っておりますので、私もその時期その他についてはお任せ願いたい、こう申し上げているのでございます。

○菅委員 この問題はちょっとこのままでは引き下がれませんので、時期についてはと言ってそれが一年先だとか半年先だったら、結局食い逃げですよ。ピシバニールに関係しクレスチンに関係し、みずから基本特許をとったプロテクトンに関係をして、さらに顧問をやって、それで今度はライバルメーカーがつくっているといいますか、一種のライバル関係にある丸山ワクチンの審議にああいう形でかかわっている。それがいつになるかわからない。疑惑を招いたら困るから何とかするけれども、いつになるかわからない。  

 これはちょっと委員長の方でどうかしてもらえませんか。

○山下委員長 後刻理事会で御相談いたしましょう。

○菅委員 あわせてもう一つだけ申し上げて、時間もなくなりましたのであれしたいと思うのです。きょう朝のときにも申し上げたように、今回の問題で先ほどほかの委員の方からもありましたが、抗悪性腫瘍剤調査会が七月十日に審議をして一定の結論が出て、一昨日特別部会に出したわけですけれども、二つの点でこの審議はおかしいと思うわけです。その一つがいま言ったメンバーの問題そのことです。それからもう一つが、先ほど小林先生からもお話がありましたように、その事実認定そのものが明らかに間違っていた。東北大学のデータについて間違っていた。それを本来のがんの専門家が、臨床医を含めて中心にいるところで、審議しないまま特別部会に持っていった。  

 先ほど言いましたように、いまの調査会というのは直接には異議申し立ての制度がないわけですよ。ですから私は大臣にぜひお願いしたいのは、この結果がどうなろうとも、私はやり直すかまたは諮問をし直してもらいたい。つまり新しい調査会メンバーを選任後、申請が出ているのは厚生大臣に出ているわけですから、諮問の結果がおかしければもう一回再諮問ということも大臣の権限でできるはずなのです。ですから、こういうおかしな形でやられた審議については再諮問をしていただきたい。そのことについて御答弁をお願いしたいと思います。

○村山国務大臣 私は、先ほど申し上げましたように、今度の審査が不公平に行われたという感じを持っていないのでございます。皆さんがその人的構成についておかしいということは言えるかもしれません、あるいは疑うに足るというようなお話かもしれません。しかし、私はずっと聞いてまいりまして、そういう立場を離れて、学者は学者として真剣な討論をしておる。そしてまた、いまの運営でございますけれども、基礎医学は基礎医学の立場で、臨床は臨床でそれぞれがみんな分業でやっているわけでございます。そういったことから言いまして、今度の審査が公正を具体的に欠いているという心証を実は得ていないのでございます。これは私の心証でございます。

○菅委員 それでは最後に一言だけ申し上げて終わりにしますが、先ほども申し上げましたピシバニールの調査報告書の中にこういう一項があるのです。「臨床の側において、作用機序の特異な本剤使用への強い要望があることを考慮し、特別部会への審議送付を決定した。」この最後の末尾に書いてあるわけです。  

 これはどういうことかといいますと、当時免疫療法として初めて開発されたピシパニールはかなり副作用が心配をされている。この中にも書いてあるわけです。しかし、いまがんというものを考えたときに、こういう免疫療法というものは臨床のお医者さんの中で非常に要請が強い。だからそういう点も勘案して、いろいろ注意項目も入っていますけれども、注意をしながら使ってもいいのじゃないかということで出しているという一項目があるわけです。  

 私は丸山ワクチンについても、まさにいまのがんという治らない、なかなか治りにくいという現状、さらに副作用がないという現状、さらに手術後の再発防止なんかで効果的な免疫療法が非常に要求されている。これは患者だけではなくて、すでに相当多くのお医者さん自身がそういうことを要請する署名を集めて、何千人という方がそういうことを言っておられるわけです。さらに加えれば、クレスチン、ピシバニールについては、何でも六年後の見直しというのは、あるいは事前にさかのぼらないということでやらないそうですけれども、去年から少なくとも今後認可されるものは、認可された時期から六年後には確実に見直しをするということを薬事法の中で決められているわけですね。そういう点でもすべて勘案をしてみれば、まさにこれが認可になって全くおかしくない。そういうお医者さんや患者の要請も非常に強いわけですから、そのあたりもあわせて大臣には判断をいただきたい。先ほど心証だからと言われましたけれども、そういった結果がそうでない方向に向いているとすれば、やはりその心証を変えていただいて御判断をいただきたいということを最後に申し添えて、私の質問を終わらせていただきます。

○山下委員長 本日は、これにて散会いたします。

 

 臨場感あふれる記録です。政治的にどうかということはここでは問いませんが、疑惑を鋭く追及する場面が目に浮かぶようです。

 

 この部分からも、少なくとも丸山ワクチンを審議する委員の構成に疑惑がもたれた、ということがあったことがわかります。

 昭和56年のできごとですが、現在でもこのような問題が起こることがあります。歴史は繰り返す、ということなのでしょうか。それとも、みじんも成長していない、ということなのでしょうか。

 それはともかく、ここで散会しています。このような問題が露呈し、その後の審議の行方はどうなったのでしょうか。

 有償治験となった経緯をさらに調べていきましょう。

 

つづく

丸山ワクチン、参議院から - 地域医療日誌

*1:委員長 山下徳夫君

*2:中央薬事審議会の抗悪性腫瘍剤調査会

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