母親の手記から
大手広告会社電通の新入社員だった高橋まつりさんが自殺してから、今日で1年になるそうです。
高橋さんの母親が手記を寄せたことが、各社から報道されています。内容を個々に留めるため、そして社会的意義を考慮して、あえて全文を引用掲載させていただきたいと思います。
まつりの命日を迎えました。
去年の12月25日、クリスマス・イルミネーションできらきらしている東京の街を走って、警察署へ向かいました。うそであってほしいと思いながら…。前日までは大好きな娘が暮らしている、大好きな東京でした。 あの日から私の時は止まり、未来も希望も失われてしまいました。息をするのも苦しい毎日でした。朝目覚めたら全て夢であってほしいと、今も思い続けています。
まつりは、あの日どんなにつらかったか。人生の最後の数カ月がどんなに苦しかったか。
まつりはずっと頑張ってきました。就職活動のエントリーシートの自己PRの欄に、「逆境に対するストレスに強い」と書いていました。自分が困難な境遇にあっても絶望せずあきらめないで生きてきたからです。10歳の時に中学受験をすることを自分で決めてから、夢に向かって努力し続けてきました。
凡才の私には娘を手助けできることは少なく、周囲のたくさんの人が娘を応援してくれました。娘は、地域格差・教育格差・所得格差に時にはくじけそうになりながらも努力を続け、大学を卒業し就職しました。
電通に入ってからも、期待に応えようと手を抜くことなく仕事を続けたのだと思います。その結果、正常な判断ができないほどに追い詰められたのでしょう。あの時、私が会社を辞めるようにもっと強く言えばよかった。母親なのにどうして娘を助けられなかったのか。後悔しかありません。
私の本当の望みは娘が生きていてくれることです。
まつりの死によって、世の中が大きく動いています。まつりの死が、日本の働き方を変えることに影響を与えているとしたら、まつりの24年間の生涯が日本を揺るがしたとしたら、それは、まつり自身の力かもしれないと思います。でも、まつりは、生きて社会に貢献できることを目指していたのです。そう思うと悲しくて悔しくてなりません。
人は、自分や家族の幸せのために、働いているのだと思います。仕事のために不幸になったり、命を落とすことはあってはなりません。
まつりは、毎晩遅くまで皆が働いている職場の異常さを指して、「会社の深夜の仕事が、東京の夜景をつくっている」と話していました。まつりの死は長時間労働が原因であると認定された後になって、会社は、夜10時以降消灯をしているとのことですが、決して見せ掛けではなく、本当の改革、労働環境の改革を実行してもらいたいと思います。
形の上で制度をつくっても、人間の心が変わらなければ改革は実行できません。
会社の役員や管理職の方々は、まつりの死に対して、心から反省をして、二度と犠牲者が出ないよう、決意していただきたいと思います。
そして社員全ての人が、伝統を重んじることにとらわれることなく、改善に向かってほしいと思います。
日本の働く人全ての意識が変わってほしいと思います。
(各社報道記事から全文引用、太字はぼくが追加)
本人そしてご家族の心情を察すると、つらく切ない想いです。
働く人々へのメッセージ
この手記は電通にあてられたものではなく、日本の働く人々や社会に向けられたメッセージでしょう。
働く人々の一員として、そして日本社会の一員として、しかと受け止めたいと思います。
医療分野も決して他人事ではありません。どうしたら「働く人全ての意識」を変えていけるのか、よく考えていかなければならないでしょう。
当ブログでも、過重労働について過去にとりあげた記事があります。
過労死や自殺については、まだ取り上げていませんでした。論文もありますので、いずれご紹介したいと思います。
つづく