地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

家族が水痘にかかったら72時間以内にワクチンを

質問

 家族が水痘にかかったのですが、今からワクチンをやっても間に合いますか?

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水痘は自然に治るがかからないほうがいい 

 水痘は水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus (VZV))によって発症する感染症です。

 多くは合併症なく自然治癒しますが、まれな合併症が知られています。

  • 肺炎
  • 脱水症
  • 肝炎
  • 小脳失調(4,000例に1例)
  • 脳炎(10万例に1.7例)

 

 また、妊婦には注意が必要です。

  • 妊娠20週までの妊婦が水痘患者に接触すると、2%の胎児に先天性水痘症候群 *1 を発症するリスクがあります。
  • 妊娠第3三半期の妊婦が水痘患者に接触すると、妊婦の肺炎のリスクが高くなります。
  • 分娩の5日前から2日後の妊婦が水痘を発症すると、胎児の17-30%に重症な新生児水痘を発症します。

 

 いったんVZVに初期感染してしまうと感覚神経節に潜伏し、将来帯状疱疹を発症することがあります。

 一度発症すると終生免疫を獲得するとされますが、二度かかることもあるという報告もあります *2

 

 まあ何かと、やっかいなウイルスですね。

 ワクチンもありますから、できれば関わりをもちたくないウイルスです。

 

家族内発症が多い

 VZVは水疱内容物の直接接触や飛沫感染によるものです。潜伏期間は7-21日です。

 伝染力は強く、家族内での二次感染は90%近いとされています。家族内で発症した場合には、予防がきわめて重要となります。

 

 家族内発症予防に予防接種が有効という情報があります。以前、ブログでも紹介したことがあります。

水痘接触後の予防は有効? - 予防接種の効果と害

 

 紹介したのは2008年の論文でした。

 新しい情報がないか確認したところ、2014年にコクランのメタ分析がありました。

メタ分析(Macartney, 2014年) *3 

研究の概要

 水痘発症者に接触した小児または成人が水痘ワクチンを接種すると、水痘の発症が少ないか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 該当する研究は3研究のみで、メタ分析は実施せず *4

 兄弟が水痘を発症した健康な小児110人について、接触から3日以内に水痘ワクチンを接種。水痘発症は以下のとおり。

接種者:13/56人(23%)発症者の多くは軽症(皮疹が50未満)
非接種者:42/54人(78%)

 

 2008年のメタ分析から研究数はふえていませんでした。

 家族内で発症した場合、早期にワクチンを接種すると家族内発症は少なくなり、発症しても軽く済むかもしれません。

 

 水痘の曝露後予防(post-exposure prophylaxis, PEP)はぜひ検討したいところです。

 

 ちなみに、PEP全般についてはこちらのレビューが参考になります。

Postexposure Prophylaxis for Common Infectious Diseases - American Family Physician

 

*1:Congenital Varicella Syndrome - NORD (National Organization for Rare Disorders)

*2:水痘は2回かかるか? - 地域医療日誌 by COMET

*3:Macartney K, Heywood A, McIntyre P. Vaccines for post-exposure prophylaxis against varicella (chickenpox) in children and adults. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Jun 23;(6):CD001833. doi: 10.1002/14651858.CD001833.pub3. Review. PubMed PMID: 24954057.

*4:The quality of the studies varied, therefore the vaccine used in each study differed (particularly in viral titre) and as there was diversity in the study design and outcome measures chosen we did not deem it appropriate to subject the combined results to a meta-analysis.

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