地域医療日誌

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チャットボットでうつがよくなりますか?

 

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 人工知能(AI)の話題が盛んに取り上げられます。新しいテクノロジーに将来性を感じるからだと思います。医療分野もAIで変わっていくのではないか、という淡い期待を持ちながらも、なすすべもなくただ情報を拾っています。

スマホで診断?

 最近、気になった記事はこちら。

 

 診断についてはぼくもちょっとうるさいのですが、固唾をのんで見守りたいと思います。

チャットボットで治療?

 さらに、こちらも気になります。

 

 対話を通じてセラピーを行う「チャットボット」(AIを組み込んだ自動対話技術)を活用するというもの。つまり、認知行動療法をスマホでやってしまおう、というコンセプトです。なるほど。

 このなかで研究が紹介されています。ウーボットはチャットボットのことです。

 ウーボットの使い方は簡単だ。ユーザーはFacebookのメッセンジャーかモバイルアプリをインストールしてウーボットにアクセスする。ウーボットにアクセスするとウーボットの方から「こんにちは」「ご機嫌いかが?」などと話しかけてくる。ウーボットはユーザーと対話しながら動画を見せたり、ゲームへの参加を呼びかけたりもしてくる。同時にユーザーのコメントを記録し、ユーザーの心理パターンを学習してゆく。ウーボットとユーザーとのセッションは1日15分程度で修了し、ウーボットによるCBTプログラム全体は数週間程度で修了する。

ところで、ウーボットの実際の効果はどうなのだろう。スタンフォード大学医学部が行った調査によると、ウーボットを2週間使った患者に症状の明らかな改善が認められたという。通常の精神科医による面談では、CBTの効果が確認できるのに通常5週間程度かかるとされるが、ウーボットの効果は極めて高いと言えるだろう。

 

 この研究、残念ながら出典は書かれていません。そこで、キーワードで検索したところ、論文は1編のみ。おそらく間違いなさそうです。

 ということで、この論文を確認しておきましょう。

ランダム化比較試験(Fitzpatrick, 2017年) *1

研究の概要

 大学生にウーボットを使った認知行動療法を2週間行うと、電子書籍による情報提供のみに比べて、抑うつ症状 *2 、不安症状 *3 、陽性・陰性感情*4は改善するのかを検討した、オープン・ランダム化比較試験。

主な結果

 大学生70人(平均 22.2歳、女性 67%)を対象。 ウーボット群 36人、対照群 34人。83%が完遂。

 全症例を含めたITT解析では、抑うつ症状(PHQ-9)についてはウーボット群で対照群より改善がみられた。

  • ウーボット群:14.30→11.14
  • 対照群:13.25→13.67

 

研究の限界

 研究デザインの限界―具体的にはオープン試験であること、小規模トライアルのわりに脱落が多いことなど―については、十分注意が必要でしょう。

 自己評価で評価されていることから、介入群で有利な結果になっている可能性があります。

 こうした事情を考えると、ウーボットそのものの効果はもっと小さいものかもしれません。

チャットボット

 ちなみに、このウーボットについては本文中のこちらを確認しておきましょう。

Woebot

Woebot is an automated conversational agent designed to deliver CBT in the format of brief, daily conversations and mood tracking. Woebot is used within an instant messenger app that is platform agnostic and can be used either on a desktop or mobile device. Each interaction begins with a general inquiry about context (eg, “What’s going on in your world right now?”), and mood (eg, “How are you feeling?”) with responses provided as word or emoji images to represent affect in that moment. After gathering mood data, participants are presented with core concepts related to CBT by link to short video, or by way of short “word games” designed to facilitate teaching participants about cognitive distortions. The first day included an “onboarding” process that introduced the bot, adding that while the bot may seem like a person, it is closer to a “choose your own adventure self-help book” and therefore not fully capable of understanding what the needs of the user may be. The bot also briefly explained CBT and notified the user that while a psychologist was “keeping an eye on things” (ie, monitoring), this was not happening in real time and thus the service should not be used as a replacement for therapy. In addition, participants were encouraged to call 911 for emergencies.

 

 チャットボットについて、こちらでも取り上げられていました。ご参考までに。

wired.jp

 これからもテクノロジーは医療にどんどん入ってくることでしょう。期待したいと思います。

 詳しくは原著論文をごらんください。 

*1:Fitzpatrick KK, Darcy A, Vierhile M. Delivering Cognitive Behavior Therapy to Young Adults With Symptoms of Depression and Anxiety Using a Fully Automated Conversational Agent (Woebot): A Randomized Controlled Trial. JMIR Ment Health. 2017 Jun 6;4(2):e19. doi: 10.2196/mental.7785. PubMed PMID: 28588005; PubMed Central PMCID: PMC5478797.

*2:The Patient Health Questionnaire (PHQ-9), 0-27, 大きいほうが重症

*3:The Generalized Anxiety Disorder 7-item scale (GAD-7), 0-21, 大きいほうが重症

*4:The Positive and Negative Affect Schedule (PANAS), 10-50, 大きいほうが陽性

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