地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

高齢者の睡眠時間は7時間前後が長生き

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睡眠時間と総死亡の関係

 最近、なぜか睡眠関連の記事が多くなっていますが、今回も睡眠について。それも睡眠時間と真のアウトカムである総死亡や心血管死亡との関係について検討した、最近のメタ分析です。

メタ分析(da Silva, 2016年) *1

研究の概要

 一般集団を対象としたコホート研究に参加した60歳以上の高齢者のうちで、睡眠時間が長い人・短い人は、基準となる睡眠時間の人に比べて、総死亡・心血管死亡が少ないか、を検討したコホート研究のシステマティックレビュー+メタ分析

 睡眠時間の設定は研究毎に異なっている。基準となる睡眠時間は7.0時間前後の研究が多く、睡眠時間に複数の設定がある場合には最も長い群と最も短い群を比較している。

 

主な結果

 27研究、77,000人以上のデータを統合。

 睡眠時間が長い人(9時間以上の研究が多い)については、基準の人に比べて総死亡は多く(相対危険 1.33, 95%信頼区間 1.24, 1.43)*2、心血管死亡も多かった(相対危険 1.43, 95%信頼区間 1.15, 1.78)。

 睡眠時間が短い人(6時間未満の研究が多い)についても、基準の人に比べて総死亡は多く(相対危険 1.07, 95%信頼区間 1.03, 1.11)*3、心血管死亡はやや多い傾向がみられた(相対危険 1.18, 95%信頼区間 0.76, 1.84)。

 

長くても短くてもダメ

 コホート研究のメタ分析となっており、睡眠時間の基準が研究毎にも異なっています。そのような制限がある中、基準群との2群比較でメタ分析されています。

 総死亡については、睡眠時間が長い人では33%多く、短い人では7%多い、という結果した。

 心血管死亡については、睡眠時間が長い人では43%多く、短い人では18%多い傾向、という結果でした。

 

 観察研究ですから、交絡因子を考慮しなければなりません。それぞれの研究で考慮されている因子は以下の通り。

Eighteen of the 27 studies adjusted for or stratified for age and sex in the analyses. Seventeen studies adjusted for demographic and lifestyle characteristics plus comorbid conditions, and 10 included sleep-related medications as confounders. Only two studies adjusted for functional status (activities of daily living) and frailty.

 

 例えば、疾病があるから眠れない、だから眠れない人の総死亡が多くなる、といった交絡については、27研究のうち17研究で考慮されていることになります。

 これが多いのか少ないのか、これが結果にどんな影響を与えているかは、ちょっと推しはかりかねます。

 

 いずれにしても、高齢者の睡眠時間は長すぎても短すぎてもよくない、基準群である7.0時間前後がよいかもしれない、ということでしょう。

 

 まあ、睡眠もほどほどに。早く寝ようと思います。

 

*1:da Silva AA, de Mello RG, Schaan CW, Fuchs FD, Redline S, Fuchs SC. Sleep duration and mortality in the elderly: a systematic review with meta-analysis. BMJ Open. 2016 Feb 17;6(2):e008119. doi: 10.1136/bmjopen-2015-008119. Review. PubMed PMID: 26888725; PubMed Central PMCID: PMC4762152.

*2:I2=61.9%, Q=73.55, p<0.001; random model

*3:I2=4.7%, Q=27.28, p=0.39; fixed model

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