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仕事のストレスと自殺の関係

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 働く人全ての意識が変わってほしい - 地域医療日誌 につづきます。

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労働時間の管理でいいのか

 過重労働が問題になっています。もちろん、前提として長過ぎる労働時間の是正は必要でしょう。

 しかし、ただ労働時間の長短だけを論じても、仕事のストレスのごく一面にすぎない、というのがおそらく専門家の見解ではないでしょうか。

 最近、仕事のストレスと自殺の関係についてのメタ分析が発表されていましたので、ご紹介します。

メタ分析(Loerbroks, 2016年) *1

研究の概要

 働く人のうちで仕事のストレス(モデルに基づく)が大きいと、自殺の危険因子となるか、を検討した予後に関する観察研究のメタ分析。

 

主な結果

 システマティックレビューの記載はない。6つの横断研究(韓国、中国、オーストラリア、ドイツ)の結果を統合した。これらの研究は以下の3つの理論的仕事ストレスモデルのいずれかを採用している。

  • the job-demand-control [JDC] model *2
  • the effort-reward-imbalance [ERI] model *3
  • the model of organizational injustice [OJ] *4
 対象は12,422人。どのモデルも仕事ストレスと自殺はオッズ比で2倍前後、有意に多くなっていた。
 仕事ストレスの最も低い人と比較した最も高い人の自殺オッズ比は以下のとおり *5
 仕事の負荷 1.91 (95%信頼区間 1.52, 2.41)
 努力報酬不均衡 1.98 (95%信頼区間 1.48, 2.65)
 組織の公正さ全般 2.77 (95%信頼区間 1.57, 4.88)

 

労働時間ではわからない自殺リスク

 質問紙調査による仕事ストレスと自殺の関係が明らかになっています。(原文引用でも触れられていましたが、うつ状態の扱いについては調整因子として考慮しないことが一般的とされています。)

 これは長時間労働だけではなく、仕事の分量、報酬が見合っているか、組織の公正さ、なども関与している可能性が示唆されています。

 

 企業ではストレスチェックが行われるようになっています。これは一歩前進ではありますが、はじめの一歩にすぎません。

 ストレスがわかったからどうするのか、企業側の対策はまだこれからというところでしょう。

 

 単純に労働時間にばかり着目するのではなく、もう少し広い視野に立って検討すべきなのかもしれません。

 

*1:Loerbroks A, Cho SI, Dollard MF, Zou J, Fischer JE, Jiang Y, Angerer P, Herr RM, Li J. Associations between work stress and suicidal ideation: Individual-participant data from six cross-sectional studies. J Psychosom Res. 2016 Nov;90:62-69. doi: 10.1016/j.jpsychores.2016.09.008. PubMed PMID: 27772561.

*2:仕事の要求度・コントロールモデル

*3:努力・報酬不均衡モデル

*4:組織的不公正モデル(分配、組織の意思決定プロセス、社会的相互作用に関するもの)

*5:Logistic regression was applied to quantify associations between work stress and SI for each study, adjusting for age, gender, marital status, and socioeconomic status.We decided a-priori not to adjust for depressive symptoms based on conceptual considerations: Depressive symptoms might operate as an intermediate variable as they are a potential consequence of work stress [23–26] and in turn a potential causes of SI [2,27]. In epidemiological research it is not recommended to adjust for such variables [34].

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