質問
古くから温泉は体にいい、と言われますが、本当ですよね?
昔から行われてきたことに科学的根拠がなかったことが次々明らかになっています。だんだん、これまでの常識が信じられなくなってきました。
高齢者がふえており、体のあちこちの痛みで苦しむ人が多くなっています。湯治という慣習もあったほど、温泉でよくなったという話も耳にします。さすがに、温泉は体にいいですよね。
調べておきましょう。
温泉療法の効果
リウマチに対する効果を検討した、2015年のコクランメタ分析がありました。
メタ分析(Verhagen, 2015年) *1
研究の概要
リウマチと診断された人に温泉療法を行うと、他の治療や治療なしに比べて痛み・機能は改善するか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。
主な結果
9研究(579人)が採択。そのうちのほとんどは元論文バイアスの評価ができない信頼性の低い研究であった。
ここでは入浴に関する治療について取り上げる。
炭酸ガス浴にラドンを追加すると、炭酸ガス浴に比べて痛みが改善するかを検討した研究(2研究、194人)では、3か月後では痛みの有意差がなかった。6か月後では痛みが9.6%少ない(VASスコア、95%信頼区間 1.6, 17.6)傾向がみられた。
温泉療法(座って入浴)では水治療(水の中で運動)・運動療法・リラクゼーション療法と比べて痛みや機能が改善するかを検討した研究(1研究、148人)では、有意差がみられなかった。
信頼できる研究がない
まずは大きな問題は、信頼性の低い研究ばかり、という点です。
信頼できる研究自体が実施されていなければ、効果の検討が難しいものです。
温泉療法の領域では、選りすぐりの論文であっても効果の検証に耐える情報は少ない、という現状の中、どう判断するのかというところに注目が集まります。
結果は上記のとおり、数少ない研究でも痛みに対する効果がはっきりしないものが多いようです。
痛みが少ない傾向がみられた研究についても、温泉同士(ラドン含有の有無)の比較となっており、純粋な温泉療法の効果を検討したものではありません。
もう少し質の高い研究を実施してはどうかと思うのですが(実施されているかもしれませんが)、公表されていないところを見ると、あまりいい成果が出ていないためではないか、と疑いたくなります。
温泉療法は入浴とは限らない
ちょっと驚いたのは、温泉療法とは温泉に入浴するものとは限らないことです。
このメタ分析では、下記のように定義されています。
Balneotherapy is defined as bathing in natural mineral or thermal waters (e.g. mineral baths, sulphur baths, Dead Sea baths), using mudpacks or doing both.
この"mudpack"とは、泥パックのことです。これも温泉療法に含まれるようです。
泥パックについても検討されており、プラセボに比べてリウマチの痛みに対しては有意差なし、という結果となっていました。
温泉については、もう少し調べていきたいと思います。
*1:Verhagen AP, Bierma-Zeinstra SM, Boers M, Cardoso JR, Lambeck J, de Bie R, de Vet HC. Balneotherapy (or spa therapy) for rheumatoid arthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Apr 11;(4):CD000518. doi: 10.1002/14651858.CD000518.pub2. Review. PubMed PMID: 25862243.