地域医療日誌

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チーズは体によくないですよね?

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公開日 2017-6-9, 最終更新日 2017-6-13 *1

質問

 乳製品は体に悪くない、という記事を見ましたが、本当のところはどうなんですか?

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久しぶりのエビリク

 いただいたご質問から調査するプロジェクト「#エビリク」。久しぶりですが、ひとつのウェブ記事を巡ってご質問をいただきました。

 

チーズは心血管疾患のリスクか?

「チーズを食べても心臓病や脳卒中のリスクは高くならないことが研究で判明」という見出しの記事です。

Consuming cheese, milk and yoghurt – even full-fat versions – does not increase the risk of a heart attack or stroke, according to research that challenges the widely held belief that dairy products can damage health.

The findings, from an international team of experts, contradict the view that dairy products can be harmful because of their high saturated fat content. The experts dismiss that fear as “a misconception [and] mistaken belief”.

 

 乳製品は健康を害する、という信念は広く知れ渡っています。これは、飽和脂肪酸を多く含んでいるためと言われますが、本当はどうなのか?という検討を行ったひとつの研究が紹介されています。

 

 研究の結果では、チーズ、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品は、心疾患や脳卒中のリスクを高めませんでした。

 乳製品は体に悪い、というのは誤りだった可能性がある、といった内容の記事です。

 

論文をさがせ

 この記事ですが、紹介されている研究の論文情報が書かれていません。

 せめて字数の制約が少ないネット記事だけでも、引用情報をつけてもらいたいものですが・・・。そのほうが情報の信用度も上がるのですが、海外でもなかなか広まっていないようですね。

The results come from a new meta-analysis of 29 previous studies of whether dairy products increase the risk of death from any cause and from either serious heart problems or cardiovascular disease. The study concluded that such foodstuffs did not raise the risk of any of those events and had a “neutral” impact on human health.

“This meta-analysis showed there were no associations between total dairy, high- and low-fat dairy, milk and the health outcomes including all-cause mortality, coronary heart disease or cardiovascular disease,” says the report, published in the European Journal of Epidemiology.

Ian Givens, a professor of food chain nutrition at Reading University, who was one of the researchers, said:“There’s quite a widespread but mistaken belief among the public that dairy products in general can be bad for you, but that’s a misconception. While it is a widely held belief, our research shows that that’s wrong.  

 

 記事の文面から、European Journal of Epidemiologyに掲載された論文、29研究を統合したメタ分析、Ian Givensさんが著者のひとり、ということがわかります。  

 この情報から検索すると、該当する論文はおそらくこちらのようです。

Guo J, Astrup A, Lovegrove JA, Gijsbers L, Givens DI, Soedamah-Muthu SS. Milk and dairy consumption and risk of cardiovascular diseases and all-cause mortality: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. Eur J Epidemiol. 2017 Apr;32(4):269-287. doi: 10.1007/s10654-017-0243-1. Epub 2017 Apr 3. PubMed PMID: 28374228.  

 

 さて、読んでいきましょう。

メタ分析(Guo, 2017年) *2

研究の概要  

 18歳以上の成人で牛乳や乳製品の摂取量が多い人は総死亡や冠動脈疾患や心血管疾患が多くなるか、を検討した前向きコホート研究のメタ分析。  乳製品は、全乳製品、牛乳、発酵乳製品(チーズ、ヨーグルト、サワーミルクを含む)、チーズ、ヨーグルトのそれぞれについて、要約した量反応データ(dose–response data)をメタ分析した。

 

主な結果  

 29のコホート研究を統合(対象 938,465人、死亡 93,158人、冠動脈疾患 28,419人、心血管疾患 25,416人)。  

 全乳製品(200g/日あたり)については、  
総死亡(相対危険 0.99, 95%信頼区間 0.96, 1.03)  
冠動脈疾患(相対危険 0.99, 95%信頼区間 0.96, 1.02)  
心血管疾患(相対危険 0.97, 95%信頼区間 0.91, 1.02)
とほぼ同等であった。  

 牛乳についても、いずれもほぼ同等であった。  

 発酵乳製品(20g/日あたり)については、  
総死亡の相対危険 0.98(95%信頼区間 0.97, 0.99)  
心血管疾患の相対危険 0.98(95%信頼区間 0.97, 0.99)
と2%少なかった。  

 このうち、チーズ(10g/日あたり)では、  
心血管疾患の相対危険 0.98(95%信頼区間 0.95, 1.00)
と2%少ない傾向がみられたが、ヨーグルトでは同等であった。

 

発酵乳製品、とくにチーズがよいかもしれない  

 発酵乳製品においては総死亡や心血管疾患が2%少なく、チーズについては心血管疾患が2%少ない傾向がみられました。  

 この論文はコホート研究を統合したメタ分析ですから、バイアスの影響は避けられません。そもそも介入研究ではありませんので、コホート研究自体にバイアスが含まれています。ばらつきのある研究を、さらにメタ分析することでバイアスが混在します。

「メタ分析の4つのバイアス」まとめ - 地域医療日誌

 

 この研究結果を確定的なものとしてはとらえにくいでしょう。要旨にもこのように書かれています。

All of these marginally inverse associations of totally fermented dairy and cheese were attenuated in sensitivity analyses by removing one large Swedish study.  

 

 良い結果が出ているスイスのひとつの大規模な研究結果に引きずられているところがありそうです。結果はやや過大評価されている可能性があるかもしれません。  

 過大だといっても2%程度の差ですから、本当は発酵乳製品やチーズにはたいした効果はないだろう、というのが大方の見解ではないかと思います。  

 ただ、ここが最も重要なところですが、こうした研究結果を踏まえずに、「乳製品やチーズは体に悪い」という論調は控えるべきでしょう。

 

*1:note記事を転載しました。

*2:Guo J, Astrup A, Lovegrove JA, Gijsbers L, Givens DI, Soedamah-Muthu SS. Milk and dairy consumption and risk of cardiovascular diseases and all-cause mortality: dose-response meta-analysis of prospective cohort studies. Eur J Epidemiol. 2017 Apr;32(4):269-287. doi: 10.1007/s10654-017-0243-1. Epub 2017 Apr 3. PubMed PMID: 28374228.

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