地域医療日誌

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塩分はとりすぎもよくないですか?

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塩分と病気の関係

 ちょっと間が空きましたが、熱中症のつづきです。質問がひとつ残っていました。

質問

塩分のとりすぎもよくないでしょうか?

 

 ざっと検索したところ、そのものズバリの論文がありましたので、ご紹介しておきます。1年分の論文サーベイの更新となっているようです。

システマティックレビュー(Johnson, 2016年) *1

研究の概要

 食事の塩分摂取が多い人は、多くない人に比べて総死亡や心血管死亡は多いのかを検討した、ランダム化比較試験またはコホート研究のシステマティックレビュー。

 

主な結果

 2014年6月から2015年5月までに発表された論文を検索し、条件に合致する論文は3研究(ランダム化比較試験1、コホート研究のメタ分析1、コホート研究1)のみ。 

 コホート研究:3505人、18.6年間の追跡。研究開始前の尿中ナトリウム排泄量が少ない人(四分位)は、心血管死亡のハザード比 1.00(95%信頼区間 0.71, 1.42)と同等であるが、総死亡はハザード比 0.81(95%信頼区間 0.66, 1.00)と少ない傾向で、非心血管死亡はハザード比 0.57(95%信頼区間 0.42, 0.80)と少なかった。このことから、塩分摂取量がもともと多い人については、非心血管死亡や総死亡が多い傾向がみられると考えられる。

 コホート研究のメタ分析:11研究、22万人、平均13.37年の追跡。塩分摂取量が多いと心血管死亡が多かった相対危険 1.12, 95%信頼区間 1.06, 1.19)。塩分を1日0.57g多くとると、心血管死亡が1%多くなる計算となる。

 ランダム化比較試験化は頭痛を検討したものだった。

  いずれも従来の結論を変えるものではなかった。

 

 研究によって多少ばらつきがみられるようですが、塩分摂取量がもともと多い人では総死亡、非心血管死亡、血管死亡が多くなる傾向はみられているようです。

 

塩分は多くても少なくてもよくない?

 ところで、以前このブログ記事で、塩分は多すぎても少なすぎてもよくない、という論文を紹介したことがあります。

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 また塩分制限による心血管死亡の予防効果は小さいようです。

塩分制限で心血管疾患死亡は減るのか? - 地域医療日誌 by COMET

塩分制限で心臓病予防はできますか? - 地域医療日誌

高血圧患者では心血管死亡が33%少ない傾向

塩分制限で心臓病予防はできますか? - 地域医療日誌

 

 その後も議論がつづいているようです。コメント欄がにぎわっています。

Urinary sodium and potassium excretion, mortality, and cardiovascular events. - PubMed - NCBI

Associations of urinary sodium excretion with cardiovascular events in individuals with and without hypertension: a pooled analysis of data from fo... - PubMed - NCBI

 

 もともと塩分を多くとっている人はリスクが高く、塩分制限したところで大きく変化はない、という結果になるでしょうか。

 

 今後の情報にも注目しておきたいと思います。

*1:Johnson C, Raj TS, Trieu K, Arcand J, Wong MM, McLean R, Leung A, Campbell NR, Webster J. The Science of Salt: A Systematic Review of Quality Clinical Salt Outcome Studies June 2014 to May 2015. J Clin Hypertens (Greenwich). 2016 Sep;18(9):832-9. doi: 10.1111/jch.12877. Epub 2016 Jul 21. Review. PubMed PMID: 27439904.

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