地域医療日誌

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地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

睡眠薬は体によくないですよね?

3. 診断や治療についての疑問
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まずは簡易行動療法から

 眠れなくて困っている人、多いですよね。高齢者でも、しばしば相談があります。

 すぐに薬を飲み始める人もいますが、まずは簡易行動療法をおすすめします。

www.bycomet.com

 中には、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬をやめられずに、長期に飲みつづける高齢者もいます。習慣化し、薬がないと不安になってしまうため、ますますやめられなくなるという悪循環に入ってしまいます。きわめて深刻な問題です。

 とはいっても、眠れなければ最終的には薬に頼らざるをえないということもあります。そこで、決まってこのような質問が来ます。

質問
「睡眠薬は体によくないですよね?」

 

睡眠薬の効果と害

 質問するほうも、ある程度よくないという認識はあるようですが、確認するためか、たいてい質問されます。どの程度なのか、具体的な数値があったほうが説得力がありますので、確認しておきます。

メタ分析(Glass, 2005年) *1

P▶ 不眠がある60歳以上の高齢者(精神疾患は除外)に
E▶ 睡眠薬を投与すると
C▶ プラセボに比べて
O▶ 主観的な効果、有害事象はどの程度か
T▶ 治療、メタ分析

《結果》★★★ *2

24のランダム化比較試験(2,417人)の結果を統合。

効果

  • 睡眠の改善(4研究の統合)は治療必要数(NNT)で算出され、NNT 13(95%信頼区間 6.7-62.9)。
  • 睡眠の質スコア(8研究の統合)は、平均効果量 0.14(95%信頼区間 0.05-0.23, p<0.005)。これは7点満点のスコアに換算すると、平均スコアが3.7 対 3.8点という差。
  • 睡眠時間(8研究の統合)は睡眠薬群で25.2分長かった(95%信頼区間 12.8-37.8)。

有害事象

  • 代表的な有害事象は眠気、疲労感、頭痛、悪夢、嘔気、胃腸障害など。
  • 認知機能への影響(10研究):オッズ比 4.78(95%信頼区間1.47 to 15.47)
  • めまいやふらつき(13研究):オッズ比 2.25(95%信頼区間0.93 to 5.41)、この59例中、6例に転倒、1例に交通事故あり。
  • 朝や日中の疲労感(7研究):オッズ比 3.82(95%信頼区間1.88 to 7.80)

 

意外に効果が小さい

 ぼくはこの結果をみて、睡眠薬の効果は意外に小さいと感じました。

 睡眠の改善がみられるのは13人に1人、7点満点のスコアでプラセボと0.1点の差、睡眠時間では25分の差、という想定外の小さな効果です。

 飲めば眠れるというのは、やや誇張した表現かもしれません。

 

やはり害は大きい

 それに対して、有害事象は多いですね。認知機能への影響は約5倍。めまいやふらつき、疲労感などもオッズ比で示すとかなり多い印象です。

 有害事象については、論文の実数を使って樹形図にしてみました。人数が少ないため1,000人あたりの人数で示しています。

f:id:cometlog:20150613121102p:plain

 こうしてみると、有害事象はそれほど多くない印象を受けます。睡眠薬群では、認知機能への影響が約5%、めまい・ふらつきが約7%にみられる、ということになるようです。 

 

睡眠薬は体によくないですよね?

  • 2005年のメタ分析によると、睡眠薬によって認知機能への影響が約5%、めまい・ふらつきが約7%にみられる。
  • 転倒や交通事故など、重篤な有害事象もみられている。
  • 高齢者に対する睡眠薬は、効果と害のバランスをよく考えて使いたい。

 

*1:Glass J, Lanctôt KL, Herrmann N, Sproule BA, Busto UE. Sedative hypnotics in older people with insomnia: meta-analysis of risks and benefits. BMJ. 2005 Nov 19;331(7526):1169. Epub 2005 Nov 11. Review. PubMed PMID: 16284208; PubMed Central PMCID: PMC1285093.

*2:研究デザインの質を★☆☆低~★★★高の3段階で評価

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