地域医療日誌

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ただ酸素を与えればいいのか?

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質問

 SpO2が下がっているので、酸素が必要ですよね? すぐ準備します!

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本当によく聞かれます

 よく聞かれる質問です。これは看護師などの医療職からだけではなく、介護職や患者・家族からも「強く」主張されることが多くなってきました。

 酸素が足りないということは大変な事態、というイメージが直結しやすいものです。病院ならまだしも、施設や自宅から慌てて連絡してくる、ということもしばしばです。

 

 パルスオキシメーターが普及し、気軽に計測できるようになったことにも遠因があるでしょう。

 

 体温が上がったら解熱剤で下げればいい、血圧が上がったら降圧薬で下げればいい、という簡単なものではないということは、ここに来ている読者のみなさんには少しずつ理解されてきているだろうと思います。(思い込みかもしれませんが・・・。)

 それでは、SpO2も下がったら酸素を投与すればいいのでしょうか?

 きっと、そうではないですよね? そのあたりのエビデンスを確認しておきましょう。

 

急性心筋梗塞の場合

メタ分析(Cabello, 2013年) *1 

 2013年、急性心筋梗塞を発症した患者に対する酸素投与のコクラン・メタ分析 が発表されました。

 当時は、ランダム化比較試験 3研究の結果を統合し、院内総死亡は酸素投与群 5.3%、空気投与群 2.2%、相対危険 2.11(95%信頼区間 0.78, 5.68)と、酸素投与群で2倍以上院内死亡が多い傾向があるという、驚愕の結果となっていました。

 小規模の研究結果を統合したメタ分析であり、解釈に限界があるところでしょう。とはいえ、心筋梗塞の急性期でさえ、酸素投与が効果的とは限らないと、問題提起しています。

 

 あれから3年、同じ研究グループによる新たなメタ分析が2016年12月に発表されていましたので、ご紹介します。

メタ分析(Cabello, 2016年) *2

研究の概要

 急性心筋梗塞を発症した患者(発症24時間以内)が酸素投与を受けると、空気投与を受けるのに比べて総死亡は少ないのか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 5研究(1,173人、うち32人が死亡)の結果を統合。

 4週間以内の総死亡(4研究、1,123人)については、酸素投与群 16/553人、空気投与群 16/570人、リスク比 0.99(95%信頼区間 0.50, 1.95)とほぼ同等である *3

 心筋梗塞が確定した患者に限定しても、4週間以内の総死亡(4研究、871人)のリスク比 1.02(95%信頼区間 0.52, 1.98)と同等である *4 ) 。

 4週間以内の心筋梗塞の再発(2研究、578人)については、リスク比 1.67(95%信頼区間 0.94, 2.99)と、酸素投与群で多い傾向がみられた。

 

酸素でも空気でも同じ結果だった

 2016年のメタ分析では、酸素投与群で総死亡が多いという結果にはなりませんでしたが、少なくとも空気に比べても効果はみられていません。

 さらに、心筋梗塞の再発については酸素投与群で67%多い傾向がみられており、害があるかもしれないという懸念は残ります。

 

 著者らは、少なくとも急性心筋梗塞を発症した患者に慣習的に酸素投与を行うことを支持するエビデンスはなく、有害作用も否定できない、と結論づけています。

 それぞれの研究自体の質が低く、小規模であることから、まだまだこれからの研究次第では風向きが変わる可能性があります。注視していきたいと思います。

 

つづく 

あわてて在宅酸素を導入する必要はない - 地域医療日誌

*1:Cabello JB, Burls A, Emparanza JI, Bayliss S, Quinn T. Oxygen therapy for acute myocardial infarction. Cochrane Database Syst Rev. 2013 Aug 21;(8):CD007160. doi: 10.1002/ 14651858.CD007160.pub3. Review. Update in: Cochrane Database Syst Rev. 2016 Dec 19;12 :CD007160. PubMed PMID: 23963794.

*2:Cabello JB, Burls A, Emparanza JI, Bayliss SE, Quinn T. Oxygen therapy for acute myocardial infarction. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Dec 19;12:CD007160. doi: 10.1002/14651858.CD007160.pub4. Review. PubMed PMID: 27991651.

*3:I2 = 46%; quality of evidence: very low

*4:I2 = 49%; quality of evidence: very low

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