地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

がんにも音楽は効きますか?

 音楽のチカラ シリーズ、さらにつづけます。 

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 今回はがん患者に対する効果について。

 最近のコクランがありましたので、ご紹介します。

メタ分析(Bradt, 2016年) *1

研究の概要

 がん患者が、音楽療法や「薬としての音楽」介入(music medicine interventions)とともに標準治療をうけると、標準治療のみまたは標準治療と他の治療やプラセボに比べて、心理的効果(抑うつ、不安、怒り、失望、無力感)や身体的症状(倦怠感、嘔気、痛み)は改善するか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 52研究(3,731人)の結果を統合。大部分の研究の質は低かった。

 不安(13研究、1,028人)については、Spielberger State Anxiety Inventory - State Anxiety (STAI-S) scale(range 20 to 80、スコアが高いほうが不安)にて平均 -8.54点(95%信頼区間 -12.04, -5.05)、他のスコアでは標準化平均差 -0.71(95%信頼区間 -0.98, -0.43)と効果がみられた。

 抑うつ(7研究、723人)については、標準化平均差 -0.40(95%信頼区間 -0.74, -0.06)と改善傾向がみられたものの、研究の質は非常に低いものだった。

 痛み(7研究、528人)についても、標準化平均差 -0.91(95%信頼区間 -1.46, -0.36)と効果がみられた。

 

不安や痛みに対しては効果あり

 研究はたくさん行われているようですが、あまり質の高い研究がないようです。やや結果を差し引いて判断するとしても、不安や痛みについては一定の効果がありそうに思えます。

 

 研究では、ただ音楽を聞く、ということではなく、治療としての音楽の効果を検討しています。

 どのように音楽が提供されているのか、個々の論文を確認してみないとわかりませんが、このメタ分析ではこのように定義されています。

  • 音楽療法:訓練を受けた音楽療法士によって提供されたもの
  • 「薬としての音楽」介入:あらかじめ録音された音楽を医療スタッフによって提供されたもの

 

「医療と癒し」シリーズとして音楽の効果を調べてきました。治療としての音楽には一定の効果があることがわかってきています。

 今後、医療現場でも音楽の役割が見直されていくとよいかもしれません。

 

*1:Bradt J, Dileo C, Magill L, Teague A. Music interventions for improving psychological and physical outcomes in cancer patients. Cochrane Database Syst Rev. 2016 Aug 15;(8):CD006911. doi: 10.1002/14651858.CD006911.pub3. Review. PubMed PMID: 27524661.

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