地域医療日誌

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めまいの診断に役立つ所見は?

 
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質問

 めまいを主訴に受診された患者さん。前庭神経炎が疑われましたが、診断に有用な身体所見はないでしょうか。

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Head thrust test

 UpToDate *1 には"head thrust test"なるものが紹介されていました。わかりやすい図がついていましたので、利用できる方はごらんください。

UpToDate®を利用して、日々浮かび上がる臨床上の疑問をすばやく、正確に解決。

 

 別名はhorizontal-head impulse test (h-HIT)。どのようなものかはyou tubeをごらんください。(こういうものまで...便利になりましたね。)


Positive Head Impulse Test (HIT) in Peripheral Vertigo - YouTube

 

 こちらのブログでも紹介されています。さすがですね。

tyabu7973.hatenablog.com

 2008年のNeurologyに、h-HITに関する43例の診断研究論文が掲載されていました。

横断研究(2008年, Newman-Toker) *2

研究の概要

 急性めまい症(acute vestibular syndrome)で都市部の病院を受診した患者に、h-HITが陽性であれば、脳卒中を除外できるか、を検討した、横断研究。脳卒中の有無については全例CT・MRIの画像診断で確認。

 

主な結果

 43人の急性めまい症患者(平均64歳、男性65%)が対象。前庭神経炎 8人、脳卒中脳卒中であった35人のうちh-HITの結果が得られなかった1人を除外。

前庭神経炎:h-HIT陽性 8/8 (100%)、h-HIT陰性 0/8 (0%)

脳卒中:h-HIT陽性 3/34 (9%)、h-HIT陰性31/34 (91%)

 

 小規模の研究ですが、この研究からは前庭神経炎に対するhead thrust testの感度100%、特異度91%ということになるでしょうか。なかなかいい結果に見えます。

 陰性だった場合には脳卒中も念頭に置きたいところです。

 

 もうひとつ研究がありました。

コホート研究(2008年, Manalà) *3

研究の概要

 めまいがあり前庭神経炎と診断された患者 *4 について、4つの診断検査 *5 が陽性なら、症状改善が遅れるか、を検討した発端コホート研究。

 

主な結果

 前庭神経炎65人のうち、4つの診断検査の陽性率(感度)は以下の通り。

 HH: 43/65 (66%)
 HS: 62/65 (95%)
 HT: 53/65 (82%)
 Vib: 53/65 (82%)

 検査陽性の場合、陰性に比べた1か月後の症状回復のハザード比については、以下の検査で回復が遅れる傾向がみられた。

 HT陽性 0.29(95%信頼区間 0.10, 0.79)
 Vib陽性 0.31(95%信頼区間 0.11, 0.83)

 

 こちらも小規模の診断研究でした。身体所見から予後予測が可能かを検討したコホート研究、という位置づけになっています。

 

 この結果からは、head thrust testの感度は82%ということになるでしょう。やはり、前庭神経炎の除外には、ある程度有用かもしれません。

 さらに、head thrust test陽性の前庭神経炎では、1か月後の症状回復が約7割少ない、という結果になるようです。

 

これからどうするか?

 簡便な身体所見ですから、前庭神経炎が疑われた場合には、ぜひ確認したい所見です。陽性であれば前庭神経炎を強く疑う根拠となり、陰性の場合には、前庭神経炎以外の鑑別を考慮すべきでしょう。

 

*1:Furman JM. Vestibular neuritis and labyrinthitis. In: UpToDate, Post TW (Ed), UpToDate, Waltham, MA. (Accessed on January 29, 2016.)

*2:Newman-Toker DE, Kattah JC, Alvernia JE, Wang DZ. Normal head impulse test differentiates acute cerebellar strokes from vestibular neuritis. Neurology. 2008 Jun 10;70(24 Pt 2):2378-85. doi: 10.1212/01.wnl.0000314685.01433.0d. PubMed PMID: 18541870. [abstruct]

*3:Manalà M, Nuti D, Broman AT, Zee DS. Effectiveness of careful bedside examination in assessment, diagnosis, and prognosis of vestibular neuritis. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2008 Feb;134(2):164-9. doi: 10.1001/archoto.2007.35. PubMed PMID: 18283159.

*4: (1) acute vertigo for at least 24 hours; (2) horizontal unidirectional spontaneous nystagmus for at least 24 hours; (3) no hearing loss; (4) no additional neurologic signs or symptoms and, when obtained, normal brain images; and (5) abnormal caloric test results (canal paralysis or paresis).

*5:HH, head-heave test; HS, head-shake test; HT, head-thrust test; Vib, vibration test

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