地域医療日誌

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地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

まだ体質は変わっていないのですか?

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金銭と捏造ふたたび

 ブログで以前、こんな記事を書いていたのを再発見しました。自分の記事を再読し、新鮮な発見があったりします。(記憶がなくなっていて、少し恐ろしくなることもありますが・・・。)

www.bycomet.com

  • 元東京地検特捜部長の宗像委員長は、「医」の世界の非常識さが問題の温床となったとの見方を示した。
  • 清木元治所長は「社会の信頼を裏切る行為で誠に遺憾。ご迷惑とご心配をお掛けし、心からおわびしたい」と述べた。

 

 2008年7月の記事ですから、あれから5年が経っています。

 ひとつは学位審査に金銭授受があった事件。そしてもうひとつは論文の虚偽記載。

 奇しくも5年経った今また、金銭と捏造論文がニュースになっています。

 

 新聞記事のリンクも辿れなくなり、徐々に忘れ去られていく過去のできごと。あれからどうなったのか?

 

 似たような事件が繰り返される今、過去の事件を少しふりかえってみてもよいのかもしれません。

 

横浜市立大学の事件

 2008年、横浜市立大学の学位審査で金銭授受が行われていたことが内部告発で発覚した事件から、調べてみたいと思います。

Wikipedia

 こちらに事件の概要が記載されています。端的によくまとまっており、謹んで引用させていただきます。

横浜市立大学 - Wikipedia

医学部で学位取得の謝礼として現金の授受が行われていた問題

 2008年(平成20年)3月、内部通報により、医学部の学部長の研究室で、学部長のほかに教授ら十数人が大学院生らから学位取得の謝礼として現金を受け取っていたことが発覚した。2008年2月12日、医局に所属する准教授や講師11人から理事長と学長に同内部通報を非難し、追及を求める嘆願書が送られたが[7][8]、文部科学省は事実関係の調査と報告を速やかに行い、再発防止策を講じるよう同大を指導、同大調査検討委員会は医学部全教員を対象に調査を行い[9][10]、 2008年7月29日、同大は受領額の多さなどを理由に前副学長を停職4カ月、前医学部長を停職2カ月の懲戒処分とした。なお、2人は同日付で依願退職した。また、監督責任を問われた副学長ら2人と現金を受け取った者1人を懲戒処分に、現金を受け取るなどした教授ら15人を文書訓戒とした[11]。なお、依願退職した前副学長、前医学部長に2010年8月1日、同大学は名誉教授の称号を授与した。学長は「処分から2年たち、悪しき慣習もなくなった。2人以上に功績のあった教授はいなかった」と語った[12]。

 

最終報告書(2008年7月)

 この事件の報告書PDFが公開されています。対策委員会の委員長は宗像紀夫さん(弁護士、中央大学法科大学院法務研究科教授)となっています。一部のみ抜粋して引用します。

横浜市立大学の学位審査等に係る調査について 最終報告書

(平成20年7月9日 横浜市立大学学位審査等に係る対策委員会)

 

 「金銭の要求があった」と回答した2名の学位取得者が指摘する要求者は同一の指導教授であり・・・

 

学位審査前に指導教授から「学位審査後にお礼をするのは慣例だ。金額も安くしている。」旨謝礼の要求をされ、慣例としては知っていたが具体的な要求に反発し、感情的な対立から口論になり、その際に指導教授から、売り言葉に買い言葉のように、「学位を出さないこともできる。」という趣旨の発言が・・・

 

指導教授は、謝礼の要求、受領の双方につきこれを否定・・・

 

指導教授は、学位取得にかかる謝礼の要求、受領を全面的に否定しているが、学位 6取得者の回答、証言は明確、かつ具体的であり、臨場感にあふ れ、体験した者でなければ述べられない内容を含んでおり、信用性が高いと思料される・・・

 

総合的に判断して、当委員会としては、これらの事例 については、指導教授による謝礼の要求及び受領があったものと認定せざるを得ないとの結論に至った。

 

 報告書によると、この指導教授は否定しているものの、謝礼の要求と受領があったものと認定されています。

 

懲戒処分されたのに名誉教授?

 こんな顛末になっていたとは、驚きです。

 懲戒処分を受けても、名誉教授にはなれるんですね。

 これは、金銭授受の一件はたいしたことではないということの表れなのか、それとも、名誉教授はたいした立場ではないということなのか。いずれか(もしくは両者)なのでしょう。

 

 やはり、大学の品格や体質が問われていたと思います。

 

 そして、「悪しき慣習もなくなった」と高らかに語った2010年の翌年には、医学部教授によるパワハラ事件が起きています。

 

 うーん。なんとも残念な結末となっていました。やはり5年前の対応が適切だったのかどうか、ちょっと疑問に思える、というのが率直な感想です。

 

東京大学医科学研究所の事件

 2008年7月、東京大学医科学研究所(東京都港区)は、難治性血液疾患に関する研究を行っている分子療法分野の教授(52)らの論文に、実際は得ていない患者の同意や倫理委員会の承認を得たと記載する虚偽があったと発表。同教授は事実を認め、海外の雑誌に投稿した1本の論文を撤回。さらに複数の論文に虚偽記載の疑いがあり、医科研が調査を進めている、と報道された事件。

 

 こちらにも第三者委員会による調査がなされたようで、報告書PDFが公開されています。

第三者委員会報告書(2008年9月)

東京大学医科学研究所における適正な臨床研究のあり方に関して

(平成 20 年 9 月 12 日 東京大学医科学研究所 第三者判定委員会)

・一部の論文において、倫理審査委員会の承認を得た、あるいは同意書を取得した旨の虚偽記載がある。

・研究利用のための同意書の存在が確認できていない状況で、検査のために採取した検体を研究に利用した事例がある。

・匿名化すべき検体を、一部匿名化せずに研究に利用した事例がある。

・倫理審査委員会の承認を得ずに、検体を研究に利用した事例がある。

 また、これらの不適正な事実は、事後的に承認できるものではないことを確認した。

 

 責任著者は、同論文の研究内容を包含する倫理申請を行い、承認されたものと認識していたが、同論文の研究内容は当該倫理申請の内容に該当しないものであり、かつ、 当該倫理申請は倫理審査委員会の承認を得られていなかった。

 このような事態に至った経緯を確認したところ、責任著者の倫理面の手続きに関する認識不足に加え、審査途中の人事異動に伴う引継ぎが不十分であったことにより、責任著者は、 同論文の研究内容は倫理審査委員会の承認を得ていないにもかかわらず、承認されたものと誤認識したまま、論文を投稿したものと判断した。

 

 この報告書では、2100編の論文を調査されており、他に同様の事例はなかったことを確認。再発防止策についても、迅速に行われていたようです。

 東京大学本部は、医科学研究所教授に対して、論文に虚偽記載をしたとして2010年に停職1カ月の懲戒処分を行っています。

 

懲戒処分後に科研費獲得?

 この教授を代表者とする研究グループは、2011年度にiPS細胞の研究で科学研究費を獲得していました。

 虚偽記載をして咎められても、ほとぼりが覚めるとまた国の研究費を獲得していくことをどう考えるか。ここには異議があるところかもしれません。

 

 学術的に優れていれば、不正行為は見逃される。表立って国が認めているようなものではないでしょうか?

 そして、今起きている事件は、その延長線上にあるのでしょう。

 

 科学における不正行為を助長する環境が日本にはあり、そしてそれを正せなかった。このような実態が、5年前の2つの事件の事後処理から伺えるように思います。

 

 さて、2013年の重大事件はどのように対処されるのか。そして過去の教訓は生かされるか。今後もフォローしていきたいと思います。

 

体質は変わっていないのですか?

  • おそらく5年前の事件は忘れられている。(喉元過ぎれば熱さを忘れる)
  • そして今も同様の事件が繰り返されている。
  • 科学における不正行為を助長する体質のようなものがあるのではないだろうか。

 

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