地域医療日誌

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放射線は低線量でもがんになりやすいですか?

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 放射線は低線量でも白血病になりやすいですか? - 地域医療日誌 のつづき記事です。

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原発作業員の大規模研究、続報

 ひきつづき、電離放射線の低線量被曝の影響についての重要な2つの論文のうち、もうひとつの研究を見ておきましょう。

固形がんのコホート研究(Richardson, 2015年) *1

研究の概要

 1年以上原子力発電所に従事した作業員 308,297人を対象に、電離放射線の大腸被曝量が多いと固形がん *2 による死亡は多いか、を検討した後向きコホート研究 *3

 

主な結果

 観察人年は820万人年。追跡期間の中央値は26年で、そのうちの雇用期間は中央値12年。

 記録のある257,166人において、大腸の累積被曝線量の平均20.9mGy、中央値は4.1mGy。大腸被曝線量の総量は5,370.3人Gy。

 追跡期間終了までに死亡した66,632人(22%)のうち、19,748人ががんによる死亡であり、そのうち684人が白血病、5,802人が肺がんであった。

 10年間の被曝線量を1Gy当たりに換算すると、過剰死亡および90%信頼区間は以下の通り。

 全がん死亡† 0.51 (0.23 to 0.82)
 白血病以外の全がん死亡† 0.48 (0.20 to 0.79)
 固形がん死亡† 0.47 (0.18 to 0.79)
†strata: country, age, sex, birth cohort, socioeconomic status, duration employed, neutron monitoring status. 

 

固形がん死亡も1Gyで約1.5倍

 白血病死亡につづき、固形がん死亡についても、被曝線量が多くなるにつれて直線的に多くなることが、示されました。

 10年間の被曝線量を1Gy当たりに換算すると、固形がん死亡の過剰死亡は0.47倍(つまり相対危険で1Gyで1.47倍)になるということになります。

 

交絡が考慮されていない

 この2つの研究で気になるのは、著者らも指摘していますが、交絡因子の検討が十分ではない可能性があるところです。

 特に、がん死亡の研究にも関わらず、喫煙状況については測定さえされていなかったようです。また、アスベストの影響についても考慮されていない、と記載があります。

 交絡因子の考慮が不十分であることは、結果に影響を与えている可能性があり、この研究の大きな弱点でもあります。残念なところです。

 今後の検討に期待したい、とは安易に言えませんが、限界があることを承知の上で判断していくしかないでしょう。

 

放射線は低線量でもがんになりやすいですか? 

  • 原発作業員の国際コホート研究では、被曝線量が多くなると固形がん死亡が直線的に多くなる傾向がみられた。
  • 固形がん過剰死亡は1Gyにつき0.47倍となる。

 

*1:Richardson DB, Cardis E, Daniels RD, Gillies M, O'Hagan JA, Hamra GB, Haylock R, Laurier D, Leuraud K, Moissonnier M, Schubauer-Berigan MK, Thierry-Chef I, Kesminiene A. Risk of cancer from occupational exposure to ionising radiation: retrospective cohort study of workers in France, the United Kingdom, and the United States (INWORKS). BMJ. 2015 Oct 20;351:h5359. doi: 10.1136/bmj.h5359. PubMed PMID: 26487649; PubMed Central PMCID: PMC4612459.

*2:ICD-9コードでは140-199。これは、リンパ組織及び造血組織の悪性新生物を除く悪性新生物にあたる。

*3:コホート研究とは、特定の要因に曝露された集団と曝露されていない集団を一定期間追跡し、病気を発症する頻度を比較することで、特定の要因と病気の発症との関連について検討する観察研究のひとつ。

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