地域医療日誌

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熱中症予防に食塩をとったほうがいいですか?

 

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 前回の記事 熱中症を予防するには? - 地域医療日誌 では熱中症の予防策について、一般的なことを書きました。ここでよく聞かれるのは、こんな質問です。

質問

  • 熱中症予防には食塩もとったほうがいいんですよね? 
  • 塩分のとりすぎもよくないでしょうか?

 

 たしかに、先ほどの記事に塩分のことは一言も書いていませんでした。

 

熱中症対策として塩分入り食品が売られている

 最近は、塩分入りの飴やスポーツドリンクがよく売られています。これが熱中症予防になると宣伝されているようです。

 よく見ると、かなりの塩分が含まれていますね。

 最近相談に持参された方のタブレットには、100g中5gが塩分、つまりタブレットの5%が食塩でした。

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 これで熱中症予防に一定の効果があればよいのですが、どうでしょうか? ついでにちょっと調べてみました。

 

パブメドから

 二次情報を探してもいまいちヒットせず、PubMed へ。Clinical Queriesでちょっと絞り込んでみたら、レビューが1件ヒットしました。

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 早速、確認してみましょう。

レビュー(Lipman, 2014年) *1

 このレビューのなかで、食塩について書かれている部分をよんでみます。

 その前に、熱中症の種類とその治療法についてまとまっている表を引用します。

Severity of heat-related illness Diagnosis Treatment
Mild Heat cramps Oral isotonic or hypertonic fluid replacement
Heat edema Extremity elevation
Compression stockings
Moderate Heat syncope Remove from heat source
Passive cooling
Oral isotonic or hypertonic fluid hydration
Heat exhaustion Remove from heat source
Evaporative and convective cooling
Oral or intravenous isotonic or hypertonic fluid hydration
Severe Heat stroke Remove from heat source
Supportive care of airway, breathing, and circulation
Cold-water immersion
Evaporative and convective cooling
Intravenous hydrationa
Evacuationb

 

 軽症には熱けいれん、熱浮腫、中等症には熱失神、熱疲弊、重症には熱中症が挙げられています。

 まずはこういった分類をおさえたうえで、塩分についての記載を確認しましょう。

 

食塩水は熱けいれんの治療に有効?

 登場するのはたった1か所だけでした。

Minor Heat-Illness Treatment

There is scant evidence supporting treatments of minor and moderate heat-related illness. Most treatments are anecdotal but effective, and generalizable from the evidence-based treatment for more severe forms of heat-related illness (Table 3). Heat cramps, which are historically described as generalized may differ from the focal exercise-associated muscle cramps seen in endurance athletes. Although exercise-associated muscle cramps occur with neuromuscular fatigue and are relieved with passive stretching, heat cramps are relieved with oral salt solutions or electrolyte replacement that may be isotonic or hypertonic.

 

 熱けいれんについては、等張~高張食塩水の経口摂取や電解質補充で改善する、とあります。

 そして、1編の引用文献がついていました。

 なるほど、熱けいれんの治療については、エビデンスがありそうですね。それでは、その引用文献を確認してみましょう。 

 

 ところが・・・えっ? 1933年の論文ですか・・・。

 まさか、これが熱けいれんの治療に関する唯一の論文? 80年前の論文を引用せざるをえないほど、先行研究がないのか・・・。

 そして、この論文は手に入るのでしょうか?

 

つづく

*1:Lipman GS, Eifling KP, Ellis MA, Gaudio FG, Otten EM, Grissom CK; Wilderness Medical Society. Wilderness Medical Society practice guidelines for the prevention and treatment of heat-related illness: 2014 update. Wilderness Environ Med. 2014 Dec;25(4 Suppl):S55-65. doi: 10.1016/j.wem.2014.07.017. PubMed PMID:25498263.

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