現場での疑問
在宅医療現場では皮下輸液をよく行いますが、針の種類によって多少の違いがあるように感じます。
どのような違いがあるのか、実際に検討した研究があるようです。
こういう研究は本当に現場で役立ちます。
介入研究(非ランダム化・非盲検)(Neo, 2015年) *1
研究の概要
緩和ケア病棟に入院中の患者に対して、皮下輸液の際にプラスチックの針を使用すると、金属の針に比べて有害事象は少ないかを検討した、非ランダム化・非盲検介入研究。金属の翼状針、翼状のvialonカニューラ、翼状ではないpolyurethaneカニューラの3種類で比較。有害事象は局所反応、機械的合併症について検討。
主な結果
30針(各10針)を検討。局所反応は順に50%、0%、10%と翼状のvialonカニューラで少なかった。機械的合併症は順に0%、0%、20%と翼状針ではみられなかった。
比較しているのは、金属の翼状針 (Venofix®, 23G, B. Braun Melsungen AG, Melsungen, Germany)、翼状のvialonカニューラ (BD Nexiva™, 24G, Becton Dickinson Infusion Therapy Systems Inc., Sandy, UT)、翼状ではないpolyurethaneカニューラ (Introcan Safety®, 24G, B. Braun Medical, Mundelein, IL) の3種類。
それぞれどのようなものか、確認しておきましょう。リンク先の画像をご参照ください。
Venofix®
Venofix Safety Winged IV Needle available to buy online at Williams Medical Supplies
BD Nexiva™
BD (Becton, Dickinson and Company) in Canada BD Nexiva™
Introcan Safety®
かなり小規模な研究であり、これで針の優劣を決めることは難しいでしょうが、翼状のプラスチック針が最も有害事象が少なかった、という結果となっています。
これからどうするか?
以前、翼状のプラスチック針は、試験的に使ってみて採用するかどうか検討したことがあります。当時はまだ静脈内輸液の方が多く、針の切れ味や職員の慣れなど感覚的なことが問題となり、不採用となりました。
コスト面の考慮も必要ですが、この結果を参考に翼状のプラスチック針の採用をもう一度検討してみたいと思います。
*1:Neo SH, Khemlani MH, Sim LK, Seah AS. Winged Metal Needles versus Plastic Winged and Nonwinged Cannulae for Subcutaneous Infusions in Palliative Care: A Quality Improvement Project To Enhance Patient Care and Medical Staff Safety in a Singaporean Hospital. J Palliat Med. 2015 Nov 19. [Epub ahead of print] PubMed PMID: 26583758.