認知症は3秒に1人が発症
9月21日は「世界アルツハイマーデー」でした。認知症に関するいろいろな啓発活動が展開されたようです。
朝日新聞の広告特集はこちら。
「いま認知症は世界で3秒に1人が発症」というセンセーショナルな見出しになっています。
認知症高齢者は462万人
記事によると、65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症高齢者は約462万人、MCI(軽度認知障害)の高齢者は約400万人となっています。さらに、2025年には認知症高齢者は700万人まで増加するとみられています。
だからこそ予防を、という啓発記事です。
462万人という数字は、ちょうど65歳以上の高齢者の15%が認知症になっている、という計算になります。
ここの出典が記載されているのですが、たどってみたいと思います。
社保審-介護給付費分科会
第115回(H26.11.19)参考資料1
認知症施策の現状について
平成24年の認知症高齢者の現状、という資料の中に同じ図がありましたが、これも引用でした。
出典:「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(H25.5報告)及び『「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の高齢者数について』(H24.8公表)を引用
この資料にはこのように書かれています。
全国の65歳以上の高齢者について、認知症有病率推定値15%、認知症有病者数約462万人と推計 (平成24 年)。 また、全国のMCI(正常でもない、認知症でもない(正常と認知症の中間)状態の者)の有病率推定値13%、MCI 有病者数約400万人と推計(平成24年)。
やはり、認知症有病率を高齢者人口の15%と推定した図、ということです。
MCIを含めると、65歳以上の28%に何らかの認知機能低下がみられる、という推計になっています。
こんなにいるのでしょうか?
認知症は15%もいるのか?
認知症患者の実数を把握する方法は今のところありません。
過去の疫学調査の結果から推計するしかないのですが、そこに恣意が入りこむ余地があります。科学的データだから、といって鵜呑みにできないところです。
15%という数字がどこからやってきたのか、過去の調査を確認しておきましょう。
過去の疫学調査では4-11%
これまで報告された国内の主な疫学調査結果を表にまとめました。
ここまでの結果をみると、60歳または65歳以上の認知症有病率は4.1-10.6%となっています。15%のような結果はみられていません。
厚労省の横断調査結果から
認知症患者推計の根拠として最近よく引用されているのは、2009年~2011年度に厚生労働科学研究費補助金(認知症対策総合研究事業)により全国10地域で実施された横断調査(無作為標本抽出または悉皆調査)*1 の結果です。
この報告書によると、認知症の全国有病率推定値は15%となり、2010年における全国の認知症有病者数は約439万人(95%信頼区間350-497万人)と推定されました。
厳格に評価すれば認知症は多くなる
これまでの調査結果と対比すると、この横断調査では著しく高い認知症有病率となっています。
報告書ではこのような結果となった要因として、高齢化率が高くなっていることのほか、過去の調査が家族・本人への生活状況の聞き取り調査の結果が用いられているため有病率が過小評価されていた可能性を指摘しています。
診断基準によって有病率が大きく変動することは、すでに指摘されていることです *2。
認知機能評価を厳密にやれば、認知症が増える。
ただそれだけのことかもしれません。