地域医療日誌

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運動しても認知症予防にはならなかった

 

質問

 運動すると認知症は予防できますか?

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論文を読む前に

 ひさしぶりに本題へ戻りましょう。質問からの論文検索です。

 この手の質問は、情報の解釈に注意が必要です。

習慣か介入か

 まず、運動習慣なのか運動介入なのか。

  • もともと運動習慣がある人は、認知症になりにくいのか?
  • 運動をすると、認知症になりにくくなるのか?

 この2つの疑問は別物です。前者はふだんからの運動習慣との関係であり、後者は運動をはじめたときの効果、となるわけです。

 ここを混同しないようにしましょう。

だれを調べたのか

 さらに、対象者はだれなのか。

  • 健康な成人に
  • 軽度認知障害(MCI)の人に
  • 認知症と診断された人に

 対象者によって、研究の趣旨が大きくちがってくることは明らかでしょう。

 こうした紛らわしいポイントに注意しながら、論文を読んでみましょう。

 

運動で認知機能は改善するか

メタ分析(Young, 2015年) *1

研究の概要

 認知障害のない高齢者が有酸素運動を行うと、運動なしに比べて認知機能は改善するか、を検討したランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 12研究(754人)の結果を統合。11領域すべての認知機能指標について、運動群と非運動群は同等で、統計学的有意差がみられなかった。

 

結果は惨敗

 認知機能が正常の高齢者に対して、運動をしてもらったらどうなるか、という介入研究です。残念ながら、ほぼ完敗という結果でした。

 運動しても認知症の予防にはならない、というのが現在の定説です。

 運動は8-26週間されており、高齢者に対する介入量としては十分でしょう。運動の内容はこのような条件となっています。

Types of interventions
We included the physical activity interventions of any programme
of exercise of any intensity, duration or frequency which was aimed
at improving cardiorespiratory fitness. Therefore, trials must have
reported at least one objective measure of cardiorespiratory fitness.

Types of outcome measures
Trials had to report an objective measure of cardiorespiratory fitness.
Acceptable measures included, but were not limited to: VO2
max, Graded Exercise Test (GXT) rate-pressure product, heart
rate and blood pressure during modified step test, the Six-Minute
Walk Test (6MWT), 400-metre walk time, and ¼ mile walk time.

 

 心肺機能を高めるフィットネス、それも身体計測などを行って効果を測りながら行うもの。なかなかしっかり行われた運動についての研究です。

 フィットネスでは効果がない、ということなのかもしれません。

 

 脳トレ(認知トレーニング)も効果がないとの研究が複数あります *2

 認知症が予防できるとされている現在の取り組みは、ちょっと期待薄でしょう。

 

 それにしても、研究自体少なく、あっても小規模な研究ばかり。結論を急ぐべきではないでしょう。

 認知症予防の分野は、新しい取り組みで効果を検証するという姿勢がまだまだ必要な段階だと思います。

 

*1:Young J, Angevaren M, Rusted J, Tabet N. Aerobic exercise to improve cognitive function in older people without known cognitive impairment. Cochrane Database Syst Rev. 2015 Apr 22;(4):CD005381. doi: 10.1002/14651858.CD005381.pub4. Review. PubMed PMID: 25900537.

*2:2018年の認知症論文はさえなかった - 地域医療日誌

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