地域医療日誌

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薬は認知症の原因になりますか?

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 手紙で13人に1人が薬をやめられる? - 地域医療日誌のつづき記事です。

 

 ベンゾジアゼピン系(BZD)と呼ばれる薬は、睡眠薬として使用されるほかに不安障害、アルコール離脱症状、うつ病や統合失調症の補助療法などでも用いられる薬です。このBZDは依存性があるせいか、長期使用が問題視されています。

 始まってしまうと、なかなかやめにくくなる薬であることは確かです。

 

 今回取り上げる論文の導入部分にも、高齢者のBZD使用について、このように記載されています。

Prevalence of use among elderly patients is consistently high in developed countries and ranges from 7% to 43%. International guidelines recommend short term use, mainly because of withdrawal symptoms that make discontinuation problematic. Although the long term effectiveness of benzodiazepines remains unproved for insomnia and questionable for anxiety, their use is predominantly chronic in older people.

 

 BZDは高齢者にもよく処方されていますが、ガイドラインでは離脱症状のために中止することが問題なるため、短期使用が勧められています。BZDの長期使用については、睡眠障害に対する効果は証明されておらず不安障害については効果が疑問視されているにも関わらず、高齢者に対する処方の圧倒的多数が慢性処方となっています。

 

 このような背景の中で、BZDが認知症の原因のひとつとなっているのではないか、という疑問を、まずは症例対照研究という方法で検証しています。

症例対照研究(Billioti, 2014年) *1

P▶ アルツハイマー病を発症した人の
E▶ 発症前5年間のBZD使用歴は
C▶ (発症していない人と比較して)
O▶ アルツハイマー病発症の危険因子か
T▶ 予後・害、症例対照研究

《結果》★☆☆ *2

地域に居住する66歳以上の高齢者からランダム抽出した1,796人のアルツハイマー病患者と年齢、性別などをマッチさせた7,184人との比較。

BZD未使用者に比べて使用歴がある人のアルツハイマー病発症
 症例:BZD未使用 50.2%、BZD使用 49.8%
 対照:BZD未使用 60.0%、BZD使用 40.0%
 調整オッズ比 *3 1.51 (95%信頼区間1.36 to 1.69)

BZD処方日数換算での比較
 症例:1-90日 13.0%、91-180日 3.9%、181日以上 32.9%
 対照:1-90日 14.6%、91-180日 3.6%、181日以上 21.8% 
 調整オッズ比
  1-90日 1.09 (0.92 to 1.28) 
  91-180日 1.32 (1.01 to 1.74) 
  181日以上 1.84 (1.62 to 2.08)

 

 またも、樹形図にしてみました。

f:id:cometlog:20150623233404p:plain

 そもそもこれは症例対照研究ですので、BZD使用歴とアルツハイマー病発症の間には何らかの関連性がありそうですが、因果関係の有無については断言できません。これは研究デザインの限界です。

 

 そこで、因果関係があるかどうかを推定することになります(因果推論)。

 アルツハイマー病はBZD処方日数が多くなると可能性が高まるなど、量反応関係がみられています。これは因果関係を示唆する結果です。

 しかし、結果の強固性では、調整オッズ比が1.51とやや低く、他の交絡因子の影響などの可能性もありそうです。

 樹形図から割合(あるいは実数)を比較してみても、それほど大きな差があるようには見えない印象です。

 

 BZDは認知症発症と因果関係があるのかについては、今のところ判断保留としておきたいところです。 さらなる研究に期待したいと思います。

 

薬は認知症の原因になりますか?

  • BZDは短期使用が推奨されているが、長期使用が問題視されている。
  • 長期使用によってアルツハイマー病が発症するのではないかという懸念もある。
  • 症例対照研究によると、アルツハイマー病発症した人は発症していない人に比べて、過去5年間でのBZD使用歴が多いという結果が出ている。
  • 現段階では因果関係があると断定できないが、関連は示唆されるため、特に高齢者では注意が必要である。 

 

*1:Billioti de Gage S, Moride Y, Ducruet T, Kurth T, Verdoux H, Tournier M, Pariente A, Bégaud B. Benzodiazepine use and risk of Alzheimer's disease: case-control study. BMJ. 2014 Sep 9;349:g5205. doi: 10.1136/bmj.g5205. PubMed PMID: 25208536; PubMed Central PMCID: PMC4159609.

*2:研究デザインの質を★☆☆低~★★★高の3段階で評価

*3:†Adjusted for high blood pressure (diagnosis or treatment), myocardial infarction (diagnosis), stroke (diagnosis), platelet inhibitors or oral anticoagulant treatment, diabetes mellitus (diagnosis or treatment), hypercholesterolaemia (diagnosis or treatment), comorbidity (diagnosis).

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