地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

地域医療というコトバの曖昧さに意味があったのだ

 

 

そんなに悩むことはなかった

 旧ブログ *1 の過去記事 *2をふりかえっていました。

 こんなこと書いていたんだ、と今ではすっかり忘れてしまっていたこともたくさんありました。

 最近は少なくなっていた、地域医療や家庭医療の専門性に関する投稿がたくさんあり、昔をなつかしく思い出しています。

 

 なつかしく思えるということは、今はその位置にはいないということ。

 当時は基地のような拠点(まあ、すがるような拠り所といったものでしょうか)がなく、不安だったのでしょう。拠点さえあれば、そんなに悩むこともなかったのかもしれません。

 かつての自分に「まあ、そんなに悩むことないよ」とメッセージを送るような気分で、今の考えを書き留めておきたいと思います。 *3

 

地域医療の専門性を定義することのリスク

 2009年から2010年にかけての記事ですから、まだ2018年から開始することになる総合診療専門医の議論もはじまっていない時点のこと。医学部の地域枠が導入されることになり、地域医療や家庭医療(いわゆるジェネラリストジェネラリズム)の教育や専門性について少し話題にしています。

 当時から、ジェネラリストは専門性を求めれば求めるほど、本来のジェネラリストの専門性(ジェネラリズム)から離れていくのではないか、と危惧していた様子が伺えます。

 専門性を定義することとは、専門領域を「明確に定義」し、それ以外の非専門性と区別する(もしくは排除する)ことです。

 地域医療とは、臨床現場であいまいさと格闘することが専門性の核心部分であるのに、それを明確に定義することに当時から違和感を覚えていました。

 

拠り所がほしい

 しかし、専門性を明確化しようとする動きはとどまることはありませんでした。いわゆる既定路線。学会の専門家集団でさえ、異論をとなえる声は小さかったか、かき消されるようなものでした。

 今はその意味がよくわかります。自分たちの拠り所がほしい、内科や外科のように認知される専門性がほしい。単にそういうことだったのではないか、と思えるのです。

 

あれから9年、新制度が始まってしまった

 あれから9年。できあがった専門医制度はどのようなものだったか。推して知るべしでしょう。

 総合診療専門医は、その主なフィールドになるであろう診療所に、たった半年の研修期間しかありません。専門外である内科には1年半研修しなければならないのにも関わらず、です。

 少なくとも地域医療・家庭医療のフィールド(主に地域の診療所)で提供される医療の多くは、内科ではありません。内科という「狭い」範疇では語れない、医療の周辺領域を含む広大な領域です。

 修行の現場にいない研修なんて、研修と呼べるのでしょうか?

 

専門性を規定することで失う専門性

 必要な能力を細分化して効率よく研修すべきだ、と主張したくなる気持ちもわかります。もちろん、効率的な研修を追求することで、アウトカムとして評価できるような「規定された能力」は高まるかもしれません。また、ジャネラリスト全体としての能力が底上げされる可能性もあるかもしれません。

 しかし、それは短期的な自己満足にすぎないように思います。

 制度の運用がうまくいったとしても、ぼくらの能力をはるかに越えていく優秀なジェネラリストは生まれないでしょう。

 真のアウトカムは、海外制度の模倣や学会の存続ではありません。

 

独自の道を歩みたい

 現実が明らかになるのは10年後、取り返しのつかないことになっているかもしれません。

 少なくとも、ぼくは自治医科大学を卒業し、へき地医療を経験しながら家庭医療を学んだ、おそらく稀少な絶滅危惧種(もしくは先行者)のひとりとして、独自の道を切り開いていきたいと思います。

 追求するのは専門性ではありません。

 ひとつの地域で地域医療を実践すること、ここで生きること、それこそがぼくに託された使命だろうと感じています。

 まさしくこれは自治医科大学(の義務年限)によって培われたマインドだと断言できます。へき地であろうと都市部であろうと、関係ない共通のものなのです。

 

地域医療とは総合診療のことではない

 繰り返します。専門性を自らが規定してしまうことは、ジェネラリズムの本質に反します。そう、「地域医療とは総合診療のことではない。」もはやこう書くしかなさそうです。

 地域医療って何のことかわからない、定義がはっきりしない、そんな意見もあるでしょう。人によってうけとる意味も違っていることでしょう。

 しかし、それがジェネラリズムの本質ということです。定義づけられ、規定された概念からジェネラリズムは生まれようがないのです。

 マイノリティでもいい。これからも、地域や医療に対する新しい向き合い方を考え、実践していきたいと思います。

 そして10年後、その答え合わせをしましょう。

 

これは地域医療そのものだ

 今、毎日取り組んでいる仕事は「地域医療そのもの」だと確信しています。ひとつの地域を通して、全体が見えてくることもあります。

 地域あるいは地域医療という視点から、医療の構造を明らかにしていく試みを通して、医療全体をよくするための問題提起ができれば、という気持ちにはまったくゆるぎはありません。

 ほんの小さな活動ですが、これからも日誌のような発信をつづけていきたいと思います。

 

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