あのドリルやってます
話題の外来診療ドリル、ぼくもやっています。200問もあるのでしばらく楽しめそうです。ありがとうございます。
いつもお世話になっている先生方の著書でもあり、質の高さはもちろん言うまでもありませんが、やはり帯に惹かれるものがありました。
「目指せ!外来偏差値65」ですよ。
もちろん外来偏差値というものは実在しませんので、外来診療も大学受験と同じように高い偏差値を目指せ、ということでしょうか。
ちょうど長男が受験に向けて一生懸命勉強しておりますので、その横で算数など茶々を入れながら一緒に勉学に勤しんでおります。そんなこともあって、偏差値というコトバにはちょっと敏感になっています。
そして、大学受験や大学の卒業試験の頃を思い出していたところ、本の「はじめに」には編者の松村さんの大学受験のエピソードが。夏休みの問題集のようなものを作りたい、というイメージだったようです。なるほど。
ゆとり教育とか言われた時代もありましたが、首都圏の受験生たちは若い頃からとてもよく勉強していると思います。もう30年もさかのぼると記憶も曖昧ですが、ぼくはいなか育ちですから、もっとのどかで牧歌的な学生生活だったように思います。
塾なんか行かなかったという昔話をすると、今は時代がちがう、何十年前の話をしているのか、と言われそうですが、問題集をめくってみると昔から問題は全然変わってないなあとほっとします。
それでは一体何が変わったのか。やはり時代が変わったのでしょう。
ここ10年で外来診療のレベルは格段に向上した。(中略)何よりも外来診療というものの独自性を認識し、臨床推論をはじめとした外来における診断およびマネジメント方法を系統的に学ぼうとする医師たちが増えたことが最大の理由ではないだろうか。
時代も変われば外来も変わる、ということでしょうか。
偏差値なんかに気にせず生きていきたい。そう思いながらも、偏差値やドリルというコトバに反応してしまうのは、刷り込まれてしまった教育効果なのでしょう。
臨床の世界に正解はない
この本のねらいやコンセプトについては十分賛同しつつ、さらに知識を高めることによって日常診療の質向上に貢献するであろうことは容易に想像できます。
しかし、やはり「正解はひとつ」という点については一抹の不安を覚えるわけです。
一介の医者としては、本を読み進めながらも、それでいいのか? それは本当か? それではだめなのか? ドリルができれば良い医者で、できなければ悪い医者なのか? と疑問との葛藤です。
世界は正答と誤答に二分されているという考え方は、そろそろ終わりにしたいです。
こういう意味においては、受験制度も医学教育も専門医制度も、旧来の形式・テンプレートを昭和からいまだに引き継いていると言えるでしょう。
おそらく著者らも制作過程において、そのような葛藤があったのではないかと推察しています。
外来診療の現状に一石を投じ、こうしたことを考えさせられる機会となっていることこそが、この本の価値なのかもしれません。
ということで、すべての医者にぜひおすすめします。まだの方はぜひどうぞ。