意外な結果となっている牛乳論文をみてきましたが、もう少し論文をさかのぼってみたいと思います。といっても、1年以内の論文です。
コホート研究(Sahni, 2013年) *1
- P▶ コホート研究に参加した26~85歳(平均55歳)の成人について
- E▶ 牛乳やヨーグルトの摂取量が多いと
- C▶ 牛乳やヨーグルトの摂取量が少ないよりも
- O▶ 骨密度が高いか、大腿骨頚部骨折は少ないか
- T▶ 予後、コホート研究
《結果》※※
コホートは3212人が対象、骨密度の解析は2733人。
12年間の追跡期間で、大腿骨頚部骨折は43例。骨密度については、牛乳摂取量が多いと大腿骨頚部は高い傾向がみられたが、椎骨では有意差がみられなかった。
骨折については、牛乳摂取量が三分位の下位のものに比べて、中位ではハザード比 0.78(95%信頼区間 0.37–1.63)、上位ではハザード比 0.50(95%信頼区間 0.22–1.13)。
こちらは世界的に有名なコホート、フラミンガム研究の第2世代コホートを解析しています。
この分析からも、骨密度の改善も微妙ですが、骨折予防効果については明確な有意差をもって証明されなかった、ということになるでしょう。
さらにもうひとつ。こちらも同じ著者らが、フラミンガム研究の第1世代コホートを解析したものです。
コホート研究(Sahni, 2014年) *2
- P▶ コホート研究に参加した830人の成人(68~96歳、平均77歳)について
- E▶ 牛乳の摂取量が多いと
- C▶ 牛乳の摂取量が少ないよりも
- O▶ 大腿骨頚部骨折は少ないか
- T▶ 予後、コホート研究
《結果》※※
平均追跡期間11.6年。97例の大腿骨頚部骨折が発生。
牛乳を週7杯以上飲む人は、週1杯の人に比べて大腿骨頚部骨折のハザード比は 0.58(95%信頼区間 0.31–1.06)。
こちらのコホートでも牛乳摂取量が多いと、大腿骨頚部骨折は少ない傾向となっていますが、有意差はみられませんでした。
いずれもコホート研究であること、骨折の症例数も少ないことなどから、牛乳摂取量と骨折の関係を結論づけるのはやや拙速のような気がします。
いずれにせよ、牛乳による骨折予防効果は今のところ明らかとはいえないようです。
牛乳飲んで骨折を予防できる?フラミンガム研究から
- フラミンガム研究で牛乳摂取量の骨折予防効果を検討した論文が2つある。
- 牛乳による大腿骨頚部骨折の予防効果は明らかになっているわけではない。
*1:Sahni S, Tucker KL, Kiel DP, Quach L, Casey VA, Hannan MT. Milk and yogurt consumption are linked with higher bone mineral density but not with hip fracture: the Framingham Offspring Study. Arch Osteoporos. 2013;8(1-2):119. doi: 10.1007/s11657-013-0119-2. Epub 2013 Feb 1. Erratum in: Arch Osteoporos. 2013 Dec;8(1-2):132. PubMed PMID: 23371478; PubMed Central PMCID: PMC3641848.
*2:Sahni S, Mangano KM, Tucker KL, Kiel DP, Casey VA, Hannan MT. Protective association of milk intake on the risk of hip fracture: results from the Framingham Original Cohort. J Bone Miner Res. 2014 Aug;29(8):1756-62. doi: 10.1002/jbmr.2219. PubMed PMID: 24760749.