地域医療日誌

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塩分制限で心臓病予防はできますか?

 
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 2011年の記事 塩分制限で心血管疾患死亡は減るのか? - 地域医療日誌 by COMET

 の更新記事です。

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2011年時点では予防効果なし

 過去記事では、塩分制限の効果を検討した、2011年7月発表の論文(コクランのメタ分析)の結果を紹介しています。

 塩分制限で血圧が下がるということは明らかになっていますが、果たして、それによって長期的に心血管疾患が減るのかどうかについては結論が出ていませんでした。

 今回のメタ分析でも、塩分制限についてはまだ研究数が少なく十分な確証が得られているわけではありません。しかし、少なくとも、塩分制限で総死亡や心血管疾患死亡が減っているという証拠はまだ得られていないのです。

塩分制限で心血管疾患死亡は減るのか? - 地域医療日誌 by COMET

 

 この論文の更新が2014年に発表されています。結論に変更はあったのでしょうか?

 確認していきましょう。

メタ分析(Adler, 2014年) *1

研究の概要

 18歳以上の成人が塩分制限の指導を受けると、塩分制限なしに比べて、総死亡、心血管死亡、心血管疾患の発症は少ないか、を検討した予防に関するランダム化比較試験(6か月以上追跡されたもの)のメタ分析。

主な結果

 8のランダム化比較試験が採択。内訳は正常血圧3研究(3518人)、高血圧か高血圧と正常血圧の混在が5研究(3766人)。

 総死亡については、正常血圧では相対危険 0.67(60人、95%信頼区間 0.40, 1.12)、長期追跡を含む検討でも相対危険 0.90(79人、95%信頼区間 0.58, 1.40)と効果は不明確

 高血圧では相対危険 1.00(565人、95%信頼区間 0.86, 1.15)、長期追跡を含む検討でも相対危険 0.99(674人、95%信頼区間 0.87, 1.14)とほぼ同等であった。

 高血圧患者の心血管死亡については、相対危険 0.67(106人、95%信頼区間 0.45, 1.01)と塩分制限で少ない傾向がみられた。高血圧患者の心血管疾患の発症についても、相対危険 0.76(194人、95%信頼区間 0.57, 1.01)と塩分制限で少ない傾向がみられた。

 

高血圧患者では心血管死亡が33%少ない傾向

 総死亡では相変わらず効果がみられませんでした。塩分制限しても寿命は伸びない、という結論は同じです。

 ただし、高血圧患者については、心血管死亡や心血管疾患の発症がやや少ない傾向がみられました。相対危険 0.67ですから、33%少ない傾向がみられたことになります。95%信頼区間は広く、真の値は55%少ない~1%多いの間にある、ということになります。

 前回のメタ分析ではここは差が出ていませんでしたから、結論が変更となったことになります。

 

 ちなみに血圧下降はどのくらいみられたのでしょうか。

Advice to reduce salt showed small reductions in systolic blood pressure (mean difference (MD) -1.15 mmHg, 95% CI -2.32 to 0.02 n=2079) and diastolic blood pressure (MD -0.80 mmHg, 95% CI -1.37 to -0.23 n=2079) in normotensives and greater reductions in systolic blood pressure in hypertensives (MD -4.14 mmHg, 95% CI -5.84 to -2.43 n=675), but no difference in diastolic blood pressure (MD -3.74 mmHg, 95% CI -8.41 to 0.93 n=675).

 

 高血圧患者では収縮期・拡張期ともに4mmHg程度(拡張期には有意差なし)だったようです。

 

厨房での塩分制限でやっと差が出た

 ただし、このメタ分析には抄録にも記載されているような限界がありそうです。

These findings were driven by one trial among retirement home residents that reduced salt intake in the kitchens of the homes, thereby not requiring individual behaviour change. Overall many of the trials failed to report sufficient detail to assess their potential risk of bias.

 

 ひとつのランダム化比較試験 *2 が結果の8割程度という大部分を占めています。

 この研究、台湾の高齢者施設で行われており、厨房ごとに塩分制限を変えるクラスターランダム割付を行っています。提供される食事の塩分量を調整する介入方法で、通常の食事指導や生活習慣改善の介入ではありません。

 

 現実の生活でなかなかここまでやれることはないでしょうから、そういった徹底した塩分制限でもわずかな効果しか検出されない、という程度の効果だということでしょう。

 今後も注目していきたいと思います。

 

*1:Adler AJ, Taylor F, Martin N, Gottlieb S, Taylor RS, Ebrahim S. Reduced dietary salt for the prevention of cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Dec 18;(12):CD009217. doi: 10.1002/14651858.CD009217.pub3. Review. PubMed PMID: 25519688.

*2:Chang HY, Hu YW, Yue CS, Wen YW, Yeh WT, Hsu LS, et al. Effect of potassium-enriched salt on cardiovascular mortality and medical expenses of elderly men. American Journal of Clinical Nutrition 2006;83:1289–96.

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