地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

行動経済学を医療へ活用する

 

 ほんの紹介です。地域医療編集室でおしえていただきました! ありがとうございます。

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

 

 これまで医療判断学として部分的に取り扱われることはありましたが、行動経済学の医療分野への活用としてここまでまとめられた類書はなかったように思います。

 とくに第2章は参考になりました。これから活用していきたいと思います。

 

 読みながら、用語の整理がつきにくかったので、ちょっと整理してみました。

 ほんと一緒にご活用ください。

 

プロスペクト理論

 カーネマンとトベルスキーによって提唱されたもので、リスクへの態度に関する人々の意思決定の特徴を示したもの。確実性効果と損失回避という2つの特徴から成り立っている。

確実性効果

 確実なものとわずかに不確実なものでは、確実なものを強く好む傾向がある。(客観的確率と主観的確率の間には乖離があると考えられている。)

損失回避

 私たちの意思決定の特性が、利得よりも損失を大きく嫌うこと。

フレーミング効果

 確実性効果や損失回避などを背景にして、同じ内容であっても表現方法が異なるだけで、人々の意思決定が異なること。

現状維持バイアス

 現状を変更する方がより望ましい場合でも、現状の維持を好む傾向のこと。

 

現在バイアス

 計画はできるのに、それを実行するときになると、現在の楽しみを優先し、始めるのを先延ばししてしまうという人間の特性。

 

社会的選好

 自分自身の物的・金銭的選好に加え、他者の物的・金銭的利得への関心を示す選好。

利他性

 他人の利得から効用を得る。

純粋な利他性

 他人の幸福度が高まることが、自分の幸福度を高める。

ウォーム・グロー

 自分が他人のためにする行動や寄付額そのものから幸福感を感じる。

互恵性

 他人が自分に対して親切な行動をしてくれた場合に、それを返すという選好。

直接互恵性

 恩恵を与えてくれた人に対して、直接、恩を返す。

間接互恵性

 別の人に恩を返すことで間接的に恩を返す。

不平等回避

 不平等な分配を嫌う。

 

限定合理性

 意思決定に思考費用がかかることから、直感的に判断することが多いため、系統的に合理的な意思決定と比べて偏った意思決定を行うことが知られている。

サンクコスト・バイアス

 すでに支払ってしまって回収できない費用を回収しようとする意思決定しがち。

意志力

 精神的あるいは肉体的に疲労しているときには、私たちの意思決定能力そのものが低下する。

選択過剰負荷

 多すぎる選択肢があると、選択することが難しくなるため、選択肢を減らした方が、選択行動そのものを促進する傾向がある。

情報過剰負荷

 情報が多すぎると、情報を正しく評価してよい意思決定ができなくなる。

平均への回帰

 極端に平均から乖離した数字が出た場合、つぎに現れる数字の平均値はその前の試行と変わらないが、平均値より高い数字が出るとつぎは低くなるという因果関係があるように理解してしまいがち。

メンタル・アカウンティング

 予定外の事態が生じて全体の使い道を変更した方がいい場合でも、最初に決めた会計の範囲で意思決定を行う傾向がある。

ヒューリスティック

 近道による意思決定。

利用可能性ヒューリスティック

 正確な情報を手に入れないかそうした情報を利用しないで、身近な情報や即座に思い浮かぶような知識をもとに意思決定を行う。

代表性ヒューリスティック

 意思決定をする際に、統計的推論を用いた合理的意思決定をするのではなく、似たような属性だけをもとに判断すること。

アンカリング効果

 最初に与えられた数字を参照点としてしまい、その数字に意思決定が左右されてしまうこと。

極端回避性

 両端のものを選ばず、真ん中のものを選ぶ傾向。

同調効果

 同僚や隣人の行動を見て、自分の意思決定をする傾向。また、他人の行動に同調する傾向。

 

ナッジ

 このような意思決定の歪みを、行動経済学的特性を用いることで、よりよいものに変えていこうという考え方。

 選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する。

 

 詳しくは、こちらをぜひどうぞ。

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

医療現場の行動経済学: すれ違う医者と患者

 
 Copyright © 2003, 2007-2021 地域医療ジャーナル