本の紹介です。ちくま新書の新刊です。

- 作者: 葛西龍樹
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2013/08/07
- メディア: 新書
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これまで日本のプライマリ・ケアや、家庭医療を取り巻く状況がどうなってきたのか。それが、プライマリ・ケア先進国とはどのように違っているのか。
本書では、「家庭医に関する懇談会」などの歴史的経緯をふまえ、わかりやすく説明されています。
家庭医を目指す医学生・若手医師は、ぜひご一読を。
日本はプライマリ・ケア後進国
いくつかのエピソードが紹介されていますが、こういった困った問題が日常的におきているのが、日本の医療の現状でしょう。
- どの病院を受診してよいかわからず、まず大病院を受診するが、いったいどの科にあてはまるのか迷う
- ある科で診察を受けた結果、「これはうちの担当ではない」と言われて、次々いくつもの診療科をたらい回し
- 急病にどうしてよいかわからず、救急車を呼んで救急医療センターに駆け込む
- 医療機関を選ぼうとして、インターネット情報や病院ランキング、知人の口コミなどに頼る
- 病院の役割が過大評価され、病院さえ整備すればどんな問題も解決できると思っている
- たくさんの検査や投薬こそが「丁寧で質の高い医療」であり、最新鋭の機器を導入した病院こそが良質の病院という思い込みがある
このような医療環境が生まれ、長年一貫して全国各地で続いてきた背景には、やはり日本の医療の構造上の問題が潜んでいるように思えます。
もちろん、国民皆保険制度や、これまで本腰を入れて家庭医を養成してこなかったことなども一因となっているでしょう。しかし、それだけではなく、既得権益を守ろうとする組織の力が影響しているのではないか・・・そのように読めなくもありません。
将来、医療構造の大転換は避けられないとしても、どのように転換していくのがよいのか。そろそろ道筋をつけていかなければならない時期にさしかかっています。
家庭医やプライマリ・ケアを基軸とした医療の再構築、「プライマリ・ケア革命」は、そのひとつの選択肢となると確信しています。