地域医療日誌

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地域医療日誌

変化しつづける地域でともに悩み、考える医療

認知症はもっと早く治療すべき?

3. 診断や治療についての疑問 4. 医療の負の側面に関すること
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認知症に対する薬の効果は限定的

 認知症については、これまでいくつかの記事を書きました。

認知症 の検索結果 - 地域医療日誌

認知症 の検索結果 - 地域医療日誌 by COMET

 

 代表的なエビデンスをまとめた「エビクロ」(noteの有料記事とさせていただいております)もご参考にどうぞ。

note.mu

 今のところ、認知症、とくにアルツハイマー病に対する薬物療法は、限られた効果しかないことがわかっています。

 

さらに早期の段階では?

 進行した認知症に対して効果があまりなかったのに、さらに早期の軽度認知障害に治療したらどうなるのか、という研究仮説が出てくることについては、ぼくにはまったく理解できません。

 薬を売る側の論理なのでしょう。本当にうんざりします。

 どうせ、たいした効果がないはずです。この目でたしかめておきましょう。

メタ分析(Fitzpatrick-Lewis, 2015年) *1

研究の概要

 軽度認知障害(MCI)と診断された65歳以上の成人がなんらかの治療を受けると、治療なしと比べて認知機能は改善するかを検討した、治療・予防に関するランダム化比較試験のメタ分析。

 

主な結果

 17研究が該当し、そのうち13研究の結果をメタ分析として統合。

ADAS *2

  • コリンエステラーゼ阻害薬(4研究、4,188人):平均差 −0.33 (95%信頼区間 −0.73, 0.06)とほぼ同等
  • ビタミンE *3 (1研究、769人):平均差 0.85(95%信頼区間 –0.32, 2.02)とほぼ同等
  • 行動療法 *4 (1研究 *5 、92人):平均差 –0.60(95%信頼区間 –1.44, 0.24)とほぼ同等

MMSE

  • コリンエステラーゼ阻害薬(3研究、2,287人):平均差 0.17 (95%信頼区間 −0.13, 0.47) とほぼ同等
  • サプリメント *6(4研究、1,030人):平均差 0.20(95%信頼区間 –0.04, 0.43)とほぼ同等
  • 行動療法 *7 (5研究、408人): 平均差 1.01(95%信頼区間 0.25, 1.77)と行動療法で改善度が大きい傾向

 

 やはり、といった結果でしょうか。

 まさかこの結果で、効果ありと吹聴するわけではないでしょうね。

 このメタ分析だけでは、アウトカムが認知機能指標でよいのか、という問題は残ります。しかし、まだ認知症になっていない人に薬を配っても、ムダな費用がかかるだけでしょう。

 

 最近の風潮では、薬の効果が出なければ論文を捏造でもしかねない、という疑心が出てきます。読む側も、しっかりと批判的吟味をしていきたいものです。

 

*1:Fitzpatrick-Lewis D, Warren R, Ali MU, Sherifali D, Raina P. Treatment for mild cognitive impairment: a systematic review and meta-analysis. CMAJ Open. 2015 Dec 1;3(4):E419-27. doi: 10.9778/cmajo.20150057. eCollection 2015 Oct-Dec. PubMed PMID: 26770964; PubMed Central PMCID: PMC4701654.

*2:Alzheimer’s Disease Assessment Scale, cognition subscale

*3:2000 IU in combination with a multivitamin (containing 15 IU vitamin E) taken daily

*4:multicomponent exercise

*5:論文本文に誤植あり。引用文献は17ではなくこちらのようです。
Suzuki T, Shimada H, Makizako H, Doi T, Yoshida D, Ito K, Shimokata H, Washimi Y, Endo H, Kato T. A randomized controlled trial of multicomponent exercise in older adults with mild cognitive impairment. PLoS One. 2013 Apr 9;8(4):e61483. doi: 10.1371/journal.pone.0061483. Print 2013. PubMed PMID: 23585901; PubMed Central PMCID: PMC3621765.

*6:Four studies evaluated the benefits of the use of dietary supplements or vitamins for mild cognitive impairment when compared with placebo.22,23,26,27 Two of the studies evaluated the effects of vitamin E (1 study involved 2000 IU in combination with a multivitamin containing 15 IU vitamin E taken daily27 and the other involved 300 mg in combination with 400 mg of vitamin C taken daily23). One study evaluated a combination of docosahexaenoic (1.3 g) and eicosapentaenoic acid (0.45 mg) taken daily22 and another evaluated vitamin B (0.8 mg folic acid, 0.5 mg vitamin B12 and 20 mg vitamin B6) taken daily

*7:3 involving multicomponent exercise programs and 2 involving cognitive training and rehabilitation

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