地域医療日誌

新しい医療のカタチ、考えます

風疹対策、また年齢制限するの?

 

また新しい風疹対策?

 風疹予防に新たな対策が打ち出されたことが、報道されています。

 概要は以下の通り。

  • 11日公表された風疹の最新の患者数は2454人と、全国的に感染の拡大が続いている。
  • 風疹の拡大を防ぐため、厚生労働省は、特に抗体保有率が低い39歳から56歳の男性を対象に来年から3年間、予防接種などを原則無料とすることを公表。
  • 「2020年7月までに、現在39歳から56歳の世代の男性の抗体保有率を85%以上に引き上げ、今後の風疹の感染拡大を収束させることを目指します」(根本匠厚労相)
  • 職場などでの健康診断を利用して、抗体検査を行えるよう体制を整備する。

 

 対策としては一歩前進のように見えますが、不十分でしょう。

 なぜ不十分かは、過去の知見から。こちらの記事をごらんください。

www.bycomet.tokyo

 

 くりかえします。

 風疹、そして先天性風疹症候群が発生してしまう「感染症対策後進国」日本では、「すべての成人」を対象とした「風疹ワクチンの接種」が望まれます。

 

 後進国たるゆえんは、エビデンスを無視した保健医療政策でしょう。

 過去の施策の反省なく、「まずは」この対策にしようと決定したようです。(資料に「まずは」と記載されており、原文のままです。)

 

厚生科学審議会感染症部会の資料から

 今回の対策を決定したのは、2018年11月29日の厚生科学審議会感染症部会です。資料はこちら。(執筆時点で議事録はまだ公開されていません。)

第27回厚生科学審議会感染症部会(ペーパレス)資料

 

 抗体価についての資料だけで、予防接種の対象者や効果、費用対効果についての資料はありません。議事録がなくわかりませんが、おそらく検討されていないのでしょう。

 資料をちょっとのぞいてみましょう。(公開資料です)

 

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 過去の対策がうまくいかなかった、という反省はありません。はっきりと記述すべきでしょう。(議事録も確認したいです。)

 抗体価という代用のアウトカムにこだわりすぎるのは悪弊でしょうか。

 さらに、風疹が大流行して輸出国となっている日本が、なぜかオリンピックの輸入感染として心配しているというおかしさ。

 気がつかないんでしょうか。おかしなことに。

 

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 えっ?

 何を今さら...「CRSの発生を防止することしてはどうか」って、今までそうだったんじゃなかったんでしょうか?

 風疹対策するのは、当然、CRS発生が困るからでしょう。専門家ですよね? かなり心配になります。

 

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 ここですね。

まずは対象を抗体保有率が 低い世代(39~56歳の男性)に絞って重点的に対応することとしてはどうか。

 

 まずはって、一度失敗しているんですよ?

※ 取組の進捗状況等を踏まえ、対策の随時見直しを検討することとする。

 

 アウトカムはCRS発生ですよね。見直しは何年先になるのでしょうか?

 対象者を絞ったワクチンでは、周期的な流行は予防できないことは、過去の知見から明らかです。

 

 今年の流行は、過去の保健政策によって流行を防止できなかった、という結果です。

 エビデンスを参照するという簡単な手順を、しっかり踏んでいただきたいと願っていますが、このままでは今回の対策も失敗でしょうね。

 結果の判明はオリンピック年ではありません。5~7年後でしょう。

 

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